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それでもAの手って基本的に綺麗だなって思う、爪は短くとも綺麗に整えられているし、お肌もきちんとお手入れしてそう。
『拳くん、そんなに見られると恥ずかしいんだけど』
「えーAの手、好きだから見ちゃうんだよ」
『そうなの?』
そうだよ〜と笑って答える。あれ、よく考えてみると今は藤枝と家事を交代してる、つまり俺と一緒に暮らすことがあればAがほとんど家事するってことだよな。いや俺も出来ることはするつもりだけど、たぶんAの比率が確実に高くなるはず。そうなったらこの綺麗な手も荒れちゃうこともある?
んーそれは嫌だな。Aの負担は減らしてやりたい、とりあえず一緒に暮らすようになったら食器洗い乾燥機の設置は絶対だ、なんて安直な考えも浮かんでくる。
「ねぇ、こう寒いと料理したりお皿洗ったりして、手が荒れたりしないの?」
『ん、祥も家事してくれるし、そこまでは大丈夫かな。一応ハンドクリーム塗ったり毎日ケアもしてる。指先荒れたりして痛くなるとタイピングも辛くなって仕事滞っちゃうのは困るから』
やっぱり今は家事分担してるからそこまで荒れることはないと言うことか。
「そっか、それなら水仕事したんだし、今すぐハンドクリーム塗ろう」
『うん、ハンドクリームはリビングに置いてあるんだよね』
「それなら行こうか、あっその前に」
リビングに移動しかけた彼女が、えっ?と振り向いた隙をついて、その可愛い唇にキスをする。彼女はみるみるうちに赤くなり、あわあわしてて可愛い。こそこそ小声で話しかけてくるのも可愛い。
『け、拳くんっ、この間と違って祥が来るかも知れないでしょ、キスしちゃダメ』
先週藤枝が家にいるのにキスをしたことを思い出す、まああのときは藤枝に見られないって分かっていたから良かったけど、あんな風にキスをすると、今日も今日でキスしたくなった。ほらキッチンとリビングにそれぞれ居るならばお互いの姿は見えないから、リップ音を立てさえしなければ気づかれない、つまりしたって問題ないと俺は思う。
「可愛い彼女とキスしたかったんだよね。ここなら藤枝には見えてないし、舌を絡めた訳でもないし一瞬だから大丈夫」
耳元でそう囁やけば、彼女はより慌てて、そういう問題じゃないっと声が大きくなる。自分で不味いと思ったのか口元を手で隠すも、しっかり藤枝には聞こえていたようで声も飛んでくる。
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作者名:佐伯 | 作者ホームページ:
作成日時:2023年11月5日 10時