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SIDE: F




_ コトッ、



まだ誰もいない、早朝6時。

また今日も、
アノ彼の机に 何時ものセットを置く。


今日は、ホッカ.イロ。

昨日 会社に入って来る時、手擦り合わせてたから。


使ってくれますように、
そう願いを込めて 置き、部屋を出た。




彼と出会ったのは、
俺の、初仕事の時だった。


勤務中、他社からいらっしゃった 営業の方に
会議室の階を 聞かれた。

受付係といっても、
まだ入社したてで、
右も左も分からなかった俺。

その日は、運悪く、ペアの先輩が 休んでしまって
俺は、先輩無しで、仕事しなくちゃいけなかった。

建物内の階、部屋を 全て覚えていたけど、
俺は 初仕事に 緊張して、頭が真っ白になってた。

必死に 思い出そうとするが、
頭 真っ白の状態から、抜け出せない。

チラと、周りに助けを求めるが
他の先輩達は、各々忙しそうで、声を掛けにくかった。

如何しようと、アタフタしてると、



??:『 永戸会社様、お待ちしておりました。』

客:『 ん?』

??:『 私、今回 担当させて頂く、北山と申します。』

客:『 おおっ、御世話になります、村上です。』

北山:『 存じ上げております、村上様。
さあ 此方へ、案内 致します。』

村上:『 有難う、助かるわ(笑)』

北山:『 いえいえ、
で、アノ件なのですが、.. 』



まるで、目の前の俺なんて見えないという風に
会話をし乍、去って行こうとした。


風の様に現れ、助けてくれた、彼。

“ 北山 ”と 名乗った彼に、
御礼が 言いたくて、引き止める。



太輔:『 あっ、あのっ!』

北・村:『 ん?』



その声に 振り返った2人。

御礼を 言おうとするが、
中々 言葉が 痞えて、出て来ない。



北山:『 …さぁ、どうぞ 』

村上:『 あっ、おおきに。』



とうとう我慢 出来なくなったのか、
お客様を誘導する、彼。

早く言わなきゃ、て 思うのに、
未だに 声が出なくて、焦る。

そんな俺の心中を悟ったのか、彼は
お客側に見えない様に、振り向き様、
親指を 立て、小さくグーサインをした。

吃驚して、見つめていると、
笑顔で、パクパク、口を動かした。

“ 頑張れよ ”

ハッと、気付いた時には、もう
エレベーターに 乗って、行ってしまっていた。

案内できなくて、なにも言えなかった、
受付失格の、名前も知らない俺に、
笑顔で 掛けてくれた、励ましの言葉。

その彼の言葉に、笑顔に、
胸が熱くなって、きゅんとした。

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作者名:せなやす。 | 作成日時:2016年3月4日 2時

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