忘却の館と秘密の鍵【本編】 (ページ7)

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【7/死に場所と色恋/網田玲奈/ちがみ】ページ7

「最悪～！！」

思わず、廊下のど真ん中で思い切り叫ぶ。
例のトンチキ放送の後、館の地図を表示させたスマホ片手に、一通り館をまわってみた。ちなみに、反対の手にはドアノブで自分の首をシメたくなった時用のタオルを持って。

その探検の感想が冒頭の叫びの通りである。

この館で過ごす一年の間に、色んな条件をクリアしなければ殺される……と聞いたその瞬間には、「ちょっといいかも」なんて思いもした。見知らぬ洋館、謎の放送、抜け落ちた記憶、その全ての黒幕に、殺される。なかなか刺激的で、他にはない良い死に方なんじゃない？なんて。

しかし洋館をまわってみて分かった。ここはアタシの死に場所じゃない。なんかダサいのだ。何というか、清潔さとか装飾とか、そういうんじゃなくて、雰囲気が、空気感が、なんかイヤ。気に入らない、野暮い。こんなところで死ぬなんて絶対認めない！

深呼吸した後、歩みを再開しまず何をすればいいのか考える。なんだっけ、ここから無事でるためには〝ジブンのヒミツ〟とあと……そう、〝パートナー〟。

前者に関してはじっくりやらないと無理そうだけど、後者は簡単そうだ。だってさっさと適当な子つかまえて、「パートナーでーす」って宣言しちゃえばそれで達成でしょ？終わらせれるもんは終わらせちゃおう。後回しにしてロクでもない売れ残り抱えなきゃならなくなったら嫌だしね。

そうと決まれば、と、意気込んだところで、前方に歩いている男性を発見。ちょうどいい、あの人でいいや――と早足で近づいて行こうとして、やめた。
そのさらに前方に、少女の姿を確認したからである。お互い、お互いが視界に入っていないようで――予想通り、ぶつかった。何やら会話をはじめたようだ。距離が遠いせいで内容は聞き取れないが、見て取れる雰囲気は青く、甘酸っぱい……などと勝手に脳内補完する。
成る程成る程、若い子はああやって結ばれていくのね～。

妙に感心しつつ、そのまま進行方向を変えることなく突き進む。例の男女の横を通り過ぎようとする瞬間、二人の肩をトントンッと続け様に叩いた。一旦振り向かずに通り過ぎる。

二人から四、五歩程離れたあたりでやっと振り返って、二人に向かって両手でハートを作って見せた。私側から見ると、二人の顔がすっぽりハートに収まっている状態だ。そしてまた、二人の反応は見ずに進行方向へ向き直り、足早にその場を後にした。

さて、アタシもパートナーを見つけないと。