忘却の館と秘密の鍵【本編】 (ページ6)

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【6/間抜け/蓬莱こだま/ちがみ】ページ6

……ん、〝放送〟？ああ、そうだ。僕もちゃんと聞かなければ。

と、やっと我に返り耳を傾けたが――

『逃げようとしたら、み～んな死んじゃうから、宜しくねっ☆』

「えっ」

時、すでに遅し。話の流れは全く分からない。しかし、自分が何やらとてつもなく重大なことを丸々聞き逃したことは即座に分かった。
激しい動揺、それから唐突に「死ぬ」などという衝撃的な事を宣言されたことにより軽いパニックに陥る。まだ流れている放送の内容も、入ってこなくなってしまった。一旦落ち着いて、せめて残りだけでも聞かないと！と深呼吸をしたその時、放送はブツッと切れた。

不味い、本当に不味いんじゃないか。我ながら間抜けすぎる。

慌てて周りにいた誰かに先程の放送について尋ねようと顔を上げ辺りを見回したが、すでに数人は部屋の外に出て行ってしまっていた。どこへ行くんだろう。というか、この洋館らしき場所は一体何なんだろう。ここに来るまでの記憶が全くない。思い出そうと記憶を探ってみても、空白があるばかりだ。

いや、そうだ、それも放送を聞いていた人なら知ってるんだ。恥を捨てて、早く声をかけなければ……。

そんな焦燥感と不安に背を押され、混乱が尾を引く中、パッと笑顔を浮かべまだ部屋の中に残っていた一人に話しかけた。

「あの、すみません。はじめまして……少しお尋ねしてもいいですか？」