忘却の館と秘密の鍵【本編】

【12/恋を探して/黄原マリ/めんま】 ページ12

トントンとローファーの足音を響かせて黄原は何気なく館内を歩いていた。一年もの間、この中で過ごさなければならない……さらに自分のヒミツとやらを誰にも暴かれず、尚且つパートナー、所謂『恋人』を見つけるのも加えて。


「ヒミツはともかく、パートナーは然程難しくはなさそうね。」


黄原はそう言って一人微笑んだ。黄原は一度ビビッときた者にはとことん惚れやすい。そのビビッときた者をこの集められた大勢の者達から見つけ出せば良いのだ。


「それよりもまずはヒミツよね。私のヒミツって……なんなんだろう？」


そういえば何かを忘れている様な…と頭の中でぐるぐると考え込んだが一向に答えは見つからない。まぁいいかとため息を吐いて自分の部屋に入り地図を見る。


「もしパートナーを見つけられたら…。」


自分は愛される。そして、自分も相手を愛することができる。


「ふふふ。何それ、凄く最高じゃない！！」


茶目っ気溢れる笑顔で頬杖をつく。とりあえず自分の部屋に入ったのはいいものの、特に何もやることがない。


…もう一度外に出て誰かと話してみようか。


ふと、ポケットの中をまさぐると刃が少し出たカッターが入っていた。


「あれ、私なんでこんなもの持ってるんだろ……ま、いいか。」


ドアを開けて再び廊下を歩き始めた。

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