Season -autumn

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その商業ビルはここから歩いて１０分強の場所にある。

建物自体順調に組み上がっていて、半ば出来上がりつつある。

それでもこの後クレーンを下ろしたり内装に手を入れたりするとこれからゆうに半年以上はかかるということだった。

上にはオフィスが入り、下には商業施設。

本格的なオープンは来年の初夏が予定されている。

急がないけど、人員の確保もあるしできれば今月中に感触を知らせてもらえればと言ったオーナー。

俺は一日中そのことが頭から離れなかった。


「いらっしゃいませ」


ボーッとしていたんだろう。

惰性で口にした言葉に顔を上げるタイミングが遅れた。

接客に行かなくては、と目を上げるとそこにいたのは大野さんだった。


「うわ、びっくりした」

「どうしたの？相葉ちゃんらしくないね、何か考えごとしてた？」


「あひゃひゃ、ごめん。改めていらっしゃいませ」

「具合悪いとかじゃないならいいけどさ」


「大丈夫。今日は何かモチーフ？」

「んー、悪いんだけどアレンジメントっていうの？テーブルの上に飾るようアレ、作ってくんない？」


「アレンジ？全然悪くはないけど、珍しいね」

「ちょっと…ね」


言葉を濁した大野さんに少しだけ引っかかったけど、今はお客さまだし、プライベートを探るような真似はさすがにできなかった。


「色とか花、大きさは何か希望ある？」

「そうだな…色は赤系で…大きさはそんなに大きくないテーブルにちょっと飾れるくらいのやつ。花は任せるけど…」


大きさを確認するために手で示せば、それに大野さんが頷く。

真っ赤なダリアとバラを数本ずつ手にして、グリーンを配し千日紅のアクセントを入れて見せると大野さんが満足げにニッコリと笑った。


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