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「なんでだよ!」
絶対に自分の方ができる。
自分を選んだ方が良いに決まってるのに。私には、自分の方が合ってるはずなのに。
高圧的な声と、絶対に逃がさないとでも言うように強くなる手の力。
…そんな風に言えてしまう彼はやっぱり、私の言葉をなんにも聞いてくれていない。高野くんがどれだけできるとか、できないとか。私は、そんなことには興味、ない。
私の考えも、気持ちも、関係ない。ただ、自分が欲しいものを持っている人を隣に置いて、自分が満足したいだけ。そんなのは、物と同じだ。
なんで、なんて…聞きたいのは私の方。
自分の考えを無理やり押し付けようとして、それが受け入れられなかったらこうして追い詰めて、怖いことをしてくる。名前すら知らないはずの彼のことを勝手に見下している。
なんで、そんなことができるのだろう。
…どうして私は、この程度のことで、声が出なくなって。言いたいことがなにも、言えなくなってしまうのだろう。
「A…!?」
声が聞こえた。
聞こえた、と思ったら後ろから肩を抱き寄せられた。
こんな場所にいるはずがない彼が、この場にいることにも。高野くんから引きはがしてくれた彼の腕の力が強いことにも。びっくり、した。
「…怪我は?」
静かだけれどいつものような穏やかさや、余裕は感じられない声。
彼の問いかけに対して首を横に振ることで答える。
「…っわたし、は…」
…私の考えや気持ちはきちんと伝えたはずの、それでもまだ、こんな風に迫ってくる高野くんに。あと、何を伝えたら退いてくれるのだろう。
「おまえがどれだけできるのかとか、全然知らない。おまえより出来ないっていうのは事実なのかもしれない。Aは、俺にはもったいないくらい、良い子だって思うよ。…けど、俺は。少なくともおまえよりはずっと、Aのことを知ってる。笑顔にできるし、したいって思う。一緒にいたいって思うから、隣にいて恥ずかしくないように努力だってする。好きな子をこんな目に遭わせるやつには、絶対譲れない」
言葉を探して、なにも言えずにいたら、静かに口を開いたのは私でも高野くんでもなくて、悠馬くんだった。
「だからもう、諦めてくれ」
自分のことを選ばなかったことを後悔しても知らない。
…みたいな、ことを言って、退いてくれた…のかな。
「…はぁ…。はは…キレて殴りかかってきたりしたら、どうしようかと思った」
ゆっくりと息を吐いて地べたに座り込みながら、苦笑いを浮かべた。
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nano*(プロフ) - チキン神様さん» チキン神様さま、ありがとうございます。お待たせいたしました!続編も楽しんでいただけるように頑張りますね。またよろしくお願いいたします (2022年7月11日 10時) (レス) id: da0c6565c0 (このIDを非表示/違反報告)
チキン神様(プロフ) - ついに!ついにです!続編が公開されました!!nanoさんお疲れ様です〜! (2022年7月10日 21時) (レス) @page2 id: a44e6bddf2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nano* | 作成日時:2022年7月10日 21時