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そのまま高野くんの言葉の真意について深く聞いてしまいそうになった時、かなり前に、図書室での出来事で反省したことを思い出したから。読書の続きは諦めて、図書室を出ることにした。
ここは学校の中で数少ない、心を落ち着けられる大切な場所だから。いつかのように怒って、周りが見えなくなって…それで騒ぎを起こしてしまうのは、嫌。
校内で、誰かに迷惑をかけてしまうことのない場所。思いつかなくて、人があまり寄り付かない印象の第三校舎の裏を選ぶ。
「ごめんなさい。ついて来てもらってしまって」
「いや、全然。一ノ瀬がこんなに俺の話に付き合ってくれるの珍しいからむしろ嬉しいよ」
「…さっきの、なんで、って。どういう意味?」
「あー。どこから話そうか。…なんか、全然気づかれてなさそうだから。もうストレートに言うんだけど。俺、一ノ瀬のこと好きなんだ。でも、彼氏がいるならどうせフラれるんだし、このまま伝わんないままでもいいか、って。一ノ瀬って、高嶺の花だしさ。このまま諦めようって思ってた」
突然の告白に、しばらくの間思考が停止してしまった。
思っていた、って。過去形なのは、どうして?なにが彼の気持ちを変えてしまったのだろう。
「だって、敵わないじゃん」
浅野くんは自分では絶対に敵わない相手で次元が違う、のだそう。赤羽くんも、素行こそ良くないけれど彼はできる側の人だと思う。学力では、きっと勝負にならない。
人の心を完璧に推し量ることなんて、私にはできないけれど…。2人を認めているというよりは、はじめから、なにかを諦めているみたいに感じる。2人に対する、劣等感のようなものも。
「でもアイツは、浅野たちとは違うだろ。俺の方ができる。じゃあ、俺でもいいじゃん。一ノ瀬だって、隣に置くなら絶対、俺の方がいい。そう思わないか?」
そんな風に、思ってしまう彼はきっと、私の能力…数字として彼の目にもはっきりと見える、学力しか、見ていない。
「思わない。私は…能力で相手を選んでいるわけでは、ないもの」
自分では浅野くんたちに敵わないと、何かを始める前に諦めてしまったから。学力で彼らに並ぶことができる私を『隣に置いておきたい』のでしょう?劣等感から目を背けて、別のもので埋めてしまおうとしているだけ。
今の話からは、そういう風に見える。
「高野くんは、私のことが好きなわけではないと思うよ。…私は、私が好きな人と一緒にいる。そこに、あなたの納得は必要ない。…ごめんなさい」
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nano*(プロフ) - チキン神様さん» チキン神様さま、ありがとうございます。お待たせいたしました!続編も楽しんでいただけるように頑張りますね。またよろしくお願いいたします (2022年7月11日 10時) (レス) id: da0c6565c0 (このIDを非表示/違反報告)
チキン神様(プロフ) - ついに!ついにです!続編が公開されました!!nanoさんお疲れ様です〜! (2022年7月10日 21時) (レス) @page2 id: a44e6bddf2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nano* | 作成日時:2022年7月10日 21時