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私を背中に隠すようにして私の前に立った彼がほんの少しこちらを振り返って、安心させるように笑った。
頷くことで答えて、何となく不安だったから彼の服を軽く握ってみる。…よく、わからないけれど…もう大丈夫だ。
私はもう1人ではなくなって…同時に恋人がいるということも相手にわかってもらえたわけだし。それなら、知らない男の人と喫茶店に行くとか、遊ぶだとか。そんなよくわからない誘いには乗ることができなくなる。それは、相手にもきちんとわかるはずだもの、ね?
「この子、俺の彼女なんで。そういうのは困ります」
「…は、はぁ…?…ったく、なんなんだよ。キミもね、彼氏いるならちゃんとそう言ってよ?」
彼の言葉を聞いて、私と彼を順に見て…ばつが悪そうに去って行った。私が質問に答える隙を与えてくれなかったのは、あちらだと思うのだけれど…。この人とは会話のテンポが合わなかったということにしておこう、かな?
「…はぁ…。マジでごめん!俺が遅くなったから…!怖かったよな。さっきの奴に、変なこととかされてないか?」
「ううん。私も…うまくお話、できなくて…そのせいで悠馬くんにまで迷惑をかけてしまったから。ごめんなさい」
ゆっくりと息を吐き出して、こちらを振り返るとすぐに謝ってくる彼に、慌てて首を横に振る。
悠馬くんが謝ることはなにもないと思う。というか、助けてくれた人から謝られるのは、困る。もしかしたら、私が相手の言葉を遮ってでも恋人がいるということをきちんと伝えられていたら、それですんでいたのかもしれない。
「いや、Aは悪くないだろ…」
「…悠馬くんが来てくれたから大丈夫だと思えたし、本当に大丈夫だった。…悠馬くんは、すごいね。助けてくれて、ありがとう」
私が悪くないのに悠馬くんにだけ否がある、というのは、とってもおかしなことだと思う。それを伝えたら苦笑いされてしまったけれど。
「…知らない人の乱入で、せっかくの動物園が楽しめないのは、嫌」
「…それもそっか。じゃあまあ…気を取り直して、だな?」
「うん。動物園、楽しみだね?」
「そうだな。じゃあ行くか!」
「うん」
動物園の近くの駅までは、電車で移動。
「…なんか、色々あってタイミング逃がしたけどさ。Aは今日も、可愛いな。…俺がちゃんとついてないと変なのが言い寄ってくるくらい」
「…悠馬くんは…」
「ん?」
やっぱり、前原くんに何か教わっているのだと思う。
「…電車、来るよ?」
「はは、そうだな」
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nano*(プロフ) - チキン神様さん» チキン神様さま、ありがとうございます。お待たせいたしました!続編も楽しんでいただけるように頑張りますね。またよろしくお願いいたします (2022年7月11日 10時) (レス) id: da0c6565c0 (このIDを非表示/違反報告)
チキン神様(プロフ) - ついに!ついにです!続編が公開されました!!nanoさんお疲れ様です〜! (2022年7月10日 21時) (レス) @page2 id: a44e6bddf2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nano* | 作成日時:2022年7月10日 21時