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この感情を悟られてしまったら、きっと、彼のことを困らせてしまう。それは確かなことだと思う。彼は何も悪くなくて、ただ私の中のよくわからない感情が、理屈に合わないことを言っているだけ、だから。そのせいで困らせるのは絶対にだめ。
彼のぜんぶ、誰のものでもない、彼自身のものだと思う。そう、思っているはずなのに、どうして私のもの、なんて自分勝手なことを考えてしまうのかな。…自分のことのはずなのに、自分が考えていることがさっぱりわからないのだけれど。今の私は絶対に変、だと思う。

…風邪を引く前触れ、とかではないといいのだけれど。
テストの前に体調を崩してしまうのも…彼と、動物園に行くことができなくなってしまうのも、とっても困る。今日の夜は念のために少し早めに寝ておこうかな。


「…」

とりあえず、今日はいつもよりも早く寝てみるということを決めて…隣で黙々とノートと参考書に向かう彼にならって、考え事のためにしばらく止めてしまっていた手を動かすことにした。


閉館15分前の合図に、慌てて顔を上げる。
…どうやら、彼も同じタイミングで時間を意識したみたい。

「もうそんな時間か」

2人で顔を見合わせた後、窓の外に目を向ける。この図書館の閉館時間は6時だから、勉強を始めて2時間とすこしくらい経っていることになる。

「集中していると、あっという間に時間が過ぎるね」
「だな。…俺の集中力はAほどのものじゃなかったと思うけど」
「そうなの?」
「うん。俺は途中で1回休憩挟んだんだけど、Aはその間もしっかり集中して勉強してた」
「そっか…」

はじめの方はあまり集中していなかったというか…勉強とは全く関係のないことに意識を向けていたような気もするけれど。彼がしているのは恐らくその後の話だろうから、何も言わないでおこうかな。
机の上を片付けて、図書館を出る。まだ少し明るい。


差し出された手を、少し考えた後握ったら何故かくすっと笑われた。…今のやり取りに笑うところは一切なかったと思うのだけれど。

「そんな顔するなよ。笑って悪かった」

私がどんな顔をしていたのか定かではないけれど、笑ったことを謝ってくる。

「おかしいっていうか…Aもちょっとずつ、こういうのに慣れてるんだなって。なんだろう…あー。成長の記録を見てる気分?」
「私、悠馬くんの妹でも、娘でもないのだけど」
「わかってるって。Aは俺の大事な彼女です」
「…うん」
「なんでそこで目逸らすんだよ」

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nano*(プロフ) - チキン神様さん» チキン神様さま、ありがとうございます。お待たせいたしました!続編も楽しんでいただけるように頑張りますね。またよろしくお願いいたします (2022年7月11日 10時) (レス) id: da0c6565c0 (このIDを非表示/違反報告)
チキン神様(プロフ) - ついに!ついにです!続編が公開されました!!nanoさんお疲れ様です〜! (2022年7月10日 21時) (レス) @page2 id: a44e6bddf2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:nano* | 作成日時:2022年7月10日 21時

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