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「…ウソだろおまえら」
『信じられない』とでも言うような呆れ顔の前原くんと、悠馬くんの顔を順に見て。最後に彼と一緒に首を傾げる。
そこまで呆れられるようなことをした覚えはないもの。
「いや、ちゃんとしたデートがあの1回きりって…流石にあり得ねぇだろ」
前原くんと顔を合わせるのは、少し久しぶり。たまたま同じ日にお店に来た彼は、私の正面の席に着いた。
最近はどこかに出かけたのか、と、なにやらわくわくした表情で尋ねてきた。特別どこかに出かけるようなことはしていないから正直に答える。3月までは暗殺。3月からこちらは、その後の処理に、高校への入学。それどころでは、なかった…と思う。
「…図書館、とか。お買い物とか…あと、一緒に帰るのとか、は?」
日時や場所を決めて交際中の2人、または関係の発展を期待する2人が会うこと、を『デート』と呼ぶのなら、放課後にこうして彼と会うこともそう、ではないの?
「それはデートって呼ば、な…くは、ねぇかもだけど。いや一緒に帰るのはちょっと違うと思うけど!買い物だって、どうせ食材とかそんなんだろ?俺が聞きたいのはそういうんじゃないの!」
呼ばない、と言われたらデートの定義について1度確認する必要があるのかもしれない。そう思ったけれど何故か微妙な表情で呼ばなくはない、と言われた。一緒に下校することについては違う、とも。
「でも、不満はないよ…?」
少なくとも私は、だけれど。
彼と会う。色々な話をする。2人で歩きながら同じものを見るのも。別々のことをしていてただ近くにいるだけ、でも。彼のそばにいる時間は本当にとってもあたたかくて幸せ、だから。そういう時間を大切にしていきたいと思う。
単純にどこかに行きたい、と思わない。『行きたい場所』がすぐには浮かばない、というのもあるのかもしれないけれど。
「おっ、俺ちょっと…そろそろ仕事戻る!」
「磯貝が逃げた。やっぱAには勝てないか」
そういえば彼は、注文したものを運んできてこの場にいただけで、勤務中なのだった。あまりにも自然にそこにいるから、忘れかけていた。引き止めて、悪いことをしてしまったな。慌ただしく回れ右をした彼の背中に、楽しそうに声を掛ける前原くんだった。
「…さっきの話もさ。Aだなーってカンジはするけど、ちょっと無欲すぎだな?おまえはもっとワガママ言って、いっぱい楽しいとこ連れてってもらえー?」
「…わ、わがまま…」
磯貝も、その方が嬉しいと思うよ。
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nano*(プロフ) - チキン神様さん» チキン神様さま、ありがとうございます。お待たせいたしました!続編も楽しんでいただけるように頑張りますね。またよろしくお願いいたします (2022年7月11日 10時) (レス) id: da0c6565c0 (このIDを非表示/違反報告)
チキン神様(プロフ) - ついに!ついにです!続編が公開されました!!nanoさんお疲れ様です〜! (2022年7月10日 21時) (レス) @page2 id: a44e6bddf2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nano* | 作成日時:2022年7月10日 21時