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図書館に行くのなら一緒に行きたいという彼と、2人で一緒に図書館にやってきた。悠馬くんは、読書ではなくて授業に向けた予習をしたいのだそう。入学して早々に予習だなんて、真面目な彼らしくはあるかなと少し思う。
彼のお勉強の邪魔をしてしまわないように静かにしていよう。元より騒ぐつもりなんてないけれど。
「私、あっちに本を探しに行ってくるね」
「ああ、了解」
図書館内は空調が効いているおかげであたたかくて、過ごしやすい。空いている席を見つけた後、参考書の棚に向かうはずの彼に声をかけて本を探しに行く。
さて、目的の本を見つけたのは良いのだけれど…。背伸びをしたら、手が届くか届かないか、というとっても絶妙な高さだ。むこうに背の低い人でも高い場所にある本を取るのに困らないように、と踏み台が置いてあるのだけど。ひとまず本に向かって手を伸ばしてみることにした。
「……」
踵を浮かせてつま先立ちをしたら、指先がどうにか本の背表紙に触れる。どうして、そんな微妙な高さなのだろう。手が全く届かないような高さなら諦めもつくし、踏み台を取ってこようと思えるのだけれど。
「これか?」
4度目の挑戦のため手を伸ばした時。後ろから、読みたい本のすこし右側にすっと手が伸びてきてびくっとしてしまった。手を引っ込めて背伸びをするのをやめる。
「…ううん。あとみっつ左…うん、それ」
とんとん、と長い指が並んだ本の背表紙を順に指さして確認を取ってくれる。後ろから伸びてきた手は目的の本を軽々取ってしまった。
「…ありがとう」
「Aってなんか、変なとこ負けず嫌いだよな?」
「これは、そういうのではなくて…」
彼の方を振り返ってお礼を言ったら、くすくす笑いながら本を渡してくれる。
踏み台を使うと何かに負けてしまうような気がする、という謎の意地が一切なかったというと嘘になってしまうけれど。それを見透かされている感じがするのはなんだか恥ずかしいし、そういう言い方をされると否定したくなってしまうものだと思う。
「早く戻ろう?…その顔、やめて」
「はいはい」
なにやら楽しげな笑いをいつまでも収めてくれない彼の頬を、恥ずかしさを誤魔化すようにほんの少し、柔く引っ張ってから席に戻る。
ノートや参考書を広げた彼の隣で本を読む。こうして、教室以外の場所で本を読むときにそばに誰かがいることはなかったのだけれど…。落ち着いていられるのは、一緒にいるのが彼だから、なのかな。
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nano*(プロフ) - チキン神様さん» チキン神様さま、ありがとうございます。お待たせいたしました!続編も楽しんでいただけるように頑張りますね。またよろしくお願いいたします (2022年7月11日 10時) (レス) id: da0c6565c0 (このIDを非表示/違反報告)
チキン神様(プロフ) - ついに!ついにです!続編が公開されました!!nanoさんお疲れ様です〜! (2022年7月10日 21時) (レス) @page2 id: a44e6bddf2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nano* | 作成日時:2022年7月10日 21時