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淡い桜色の花が散り、緑に変わる頃に、彼らと…先生と出会った。
季節は巡り、葉を落とした木は次の花を咲かせる準備を着々と進めている。まだ少し肌寒いけれど、4月ももう、目の前だな…。
感慨に浸りながら、あの日、この坂の下で見上げた桜の木を見上げる。特売の卵のためにいつもより少し遠出をしたお買い物からの帰り道。こちらになにか用があるというわけでもないのに、無意識のうちに遠回りになるこの道を選んでしまっていたみたいだ。

…そろそろ、食材の重みで手が痛くなってきた。早く帰ろう。

なんとなくひとつ息を吐き出してから、止めていた足を進行方向に向け直す。



「あれ、A。買い物帰りか?」
「うん」
「…いや、なんでそっちから…?迷子にでもなったのか?」

向こうの…私が、本来通るはずだった道。そこから見慣れたふわふわの黒髪が現れたから少し驚いた。4月を待たずに再開したというアルバイトからの帰り、かな?
手に持ったスーパーの袋を見て、こちらの道から出てくるのはおかしいと指摘してくる。苦笑いと共に誤った推測を付け足して。

「流石にもう3年も過ごした生活圏内で迷子になったり、しない…」
「そっか。…拗ねるなよ」

くすりと笑う彼に、手に持っていた袋をひょいと奪われた。

「べつに、拗ねているわけではない、のと…アルバイトだったのでしょう?疲れているのだからあまり気を遣わなくても…」

袋を取り返そうと伸ばした手は、彼の左手に捕まった。

「俺のことを思うなら、手でも握って労ってくれよ」
「…お疲れ様」
「うん」

こうしてしまえば私が何も言えなくなるのを…私が未だに、手を握ることにすら気恥ずかしさを感じてしまうのを、わかってやっているのだろうな。なにやら満足気に笑う彼は少し、ずるいと思う。


「でも、こうやってばったり会えてよかった。家に着いたらさ、Aに渡したいものがあるんだ」
「渡したいもの…?」

少し歩いて、私がいつもの調子を取り戻すことができたのを見計らったみたいに声をかけてくる。
渡したいものって、一体なんだろう。

「ああ。ホワイトデー、もう過ぎちゃったけどさ…バレンタインのお返しは、渡しておきたくて」
「…ホワイトデー、おかえし…」

…ホワイトデーという日を作ったのは、日本の商売上手な製菓会社。バレンタインデーにもらったチョコレートのお返しを渡す日。
お返しのお菓子には、好きとか嫌いとか、何かしらの意味が込められることも、あるのだったっけ…。

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nano*(プロフ) - チキン神様さん» チキン神様さま、ありがとうございます。お待たせいたしました!続編も楽しんでいただけるように頑張りますね。またよろしくお願いいたします (2022年7月11日 10時) (レス) id: da0c6565c0 (このIDを非表示/違反報告)
チキン神様(プロフ) - ついに!ついにです!続編が公開されました!!nanoさんお疲れ様です〜! (2022年7月10日 21時) (レス) @page2 id: a44e6bddf2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:nano* | 作成日時:2022年7月10日 21時

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