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施設育ちだということをを聞いたおかげで白だと知れたが、一言では収まらない苦労がその裏にはあったはずだ。なのに俺は、軽率にそれを聞いてしまった。

 いや、きっと誰もが高校生で一人暮らしだと聞いたら気になって事情を聞くかもしれない。だからといって、聞いてしまったことを気にせずにいられる訳がなかった。

 俺だって、簡単に人の事情に踏み込んで欲しくないと思っているから。



「……昴さん、ボクこれからどうしたらいいかな」



 そしてこの答えを誰かに聞く時点でダメだと思うけど、彼女が俺と同じ高校生だからこそ、どうしたらいいのか分からなくなったんだ。名探偵が情けないと自分でも思ったが、人の心はそう簡単に解けない。



『何も難しいことはないさ。今まで通り接して、今日みたいに本を読みに来たらいい』

「……それでいいの?」



 だけど赤井さんから帰ってきた答えはあまりにもシンプルで、つい聞き返してしまう。すると向こう側から、微かな笑い声が届いてきた。



『今のボウヤは随分と子供らしいな』

「子供らしいって、ボクは子供だよ」

『すまんな、ボウヤがいつも物事を難しく考えているからつい。だが本人が何の問題もないと言っていたのだから、他人である俺たちはそこで踏みとどまらないといけない。もし傍目に見ても問題がありそうなら、その時にまた聞くのはありだと思うがな』



 確かにそれもそうだ。事件などがあった訳でもないのに人の事情に突っかかりすぎるのはよくない。赤井さんの言う通り、俺は難しく考えすぎてたのかもしれねーな。



『それにお嬢さんも、今まで通り話しかけられたり今日みたいに本を囲んだりする方が喜ぶのではないかな。ボウヤがお嬢さんのことを考えているなら、なおのこと態度を変えない方がいいと俺は思っているが、ボウヤはどう思う?』

「……うん、ボクもそう思う! ホントに今日は色々とありがとう! またその内A姉ちゃんと本を読みにお邪魔しに行くね」

『ええ、待っていますよ』



 赤井さんから昴さんへの切り替え早いな。

 そんなことを思いながら通話を切り、暗くなった画面を見つめる。赤井さんがあそこまではっきりと白だと言ったということは、おそらくこの先敵対することもない。何か変わったことが少しでもあれば、きっとはっきり言うことはないだろうから。

 改めてそう考えて、安堵の息を吐く。



「……よしっ、とりあえず灰原に白だってことは報告、だな」


 ──

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緋焔(プロフ) - あまねさん» コメントありがとうございます!すきと言っていただけてとても嬉しいです。 (10月8日 18時) (レス) id: cc6c003b63 (このIDを非表示/違反報告)
緋焔(プロフ) - 積田姉貴さん» コメント嬉しい限りでございます。ありがとうございます!更新頻度は遅いですが少しずつ進めていきますので、お時間ある時にまた読んでいただけたら幸いです。 (10月8日 18時) (レス) id: cc6c003b63 (このIDを非表示/違反報告)
緋焔(プロフ) - たろ。さん» 今更の返信、大変申し訳ございません。コメントありがとうございます! 赤井さんをかっこよく表現できているようで良かったです! (10月8日 18時) (レス) id: cc6c003b63 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - すきです (10月8日 13時) (レス) @page26 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
積田姉貴(プロフ) - こちら更新はもうされないのでしょうか、?とても面白く読み進めていたので少し悲しい気持ちです🥲ぜひ気が向いたときにでも更新待ってます🥺 (9月19日 22時) (レス) @page24 id: 3fa67e14b8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Scarlet10 | 作成日時:2021年5月14日 21時

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