2,悪夢 ページ3
怖い夢を見た、
兄のジャミルが蛇に巻き付かれて死んでしまう夢。
荒い呼吸を整えて体を起こす。
背中に張り付いた寝巻きが気持ち悪い。
頭を冷やそう、
落ち着くために暗い夜の廊下へと足を進める。
自室のドアを開けるときの音さえ恐ろしい。
夜の廊下は暗く、月明かりさえ雲に覆われ不穏な空気が漂っている。
自分の足音だけが廊下に響く。
暗闇の中から何本もの手が私を捕まえるため、必死に手を伸ばしているところを想像してしまう。
自分の持つ蝋燭の火が周りを怪しく照らしている。
冷や汗が首筋を垂れた。
Aは歩くスピードを上げて、水を飲みにキッチンへと向かう。
キッチンの大きな扉を見つけると深呼吸して扉を開けた。
キッチンの中は明るく兄のジャミルが主人のカリムとジャミル用、そして私の弁当の中に料理を詰めていた。
「ん？どうしたA」
「水を飲みに来たの」
正直兄がいてよかった。
早くなっていた心臓を宥めてから兄から水の入ったコップを受け取った。
いつも悪戯しているのにもかかわらず本当に優しいなぁ、そう思いながらコップに口をつけた。
するとジャミルは何かを思いついたようにこちらに向き直り
「少し味見してくれないか？」
味見は自分でも出来るのに、そう思ったがこれは兄の気遣いなのでは？と思い素直にうなずき、差し出された器を受け取った。
器の中にはマンゴーのプリンが入っていた、プリンのカラメルがあかりに照らされ輝いている。
口の中に入れるとふわりと溶けていく、でもマンゴーの甘さがしっかり残っていて美味しい。
「美味しい……」
「まぁそうだよな。」
兄のジャミルは当然だとでも言うように後ろを向き弁当の飾り付けを進めていく。
自分の料理の腕の良さを理解した上で味見をさせていたのか、私の兄は。
心の中でそんなことを思いながら完食したプリンの器をシンクへ持って行く。
洗おうとしてスポンジに手を伸ばすと
「あぁ、洗わなくていい。
料理の片付けついでに洗っておくから」
本当に私の兄は優しいなぁ、
「ん、わかった、ありがとう。
おやすみ、お兄ちゃん」
「おやすみ、A」
Aが去った後のキッチンでは妹に美味しいと言われたことに満更でもなさそうなジャミルがいたのだった。
もちろんAはそんなこと知る由もない。
fin.
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夜市 - あたまのわるいひと°∀°さん» 了解です、ハーツラビュル回が終わったら短編を入れるつもりだったので、リクエストどうもありがとうございます。精一杯書かせて頂きますね。 (2021年4月3日 13時) (
レス) id: 5befe0aadf (このIDを非表示/違反報告)
あたまのわるいひと°∀° - ジャミル妹にカリムの世話をさせて欲しい!!!お願いします!!!! (2020年11月14日 14時) (レス) id: eb666f030d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜市 | 作成日時：2020年9月13日 0時
