─本殿─ ページ37
『いつ頃に建てられたんだろうね』
「建てたよ、って日付が消えるくらい前に建てられたんだろうね」
朽ちた木の駒札を見ながら言う悟。神は死神、って文字以外が薄れている。神社の周りは大きな山に囲まれていて、妙に大きな鳥居がある。鳥居を潜るとさっきの駒札が。
「それ美味いの?ハゲたおじさんも買ってたけど」
『私をハゲたおじさんと同じ部類に入れるな』
色が褪せた鳥居の前で、コンビニで買ったコーヒーを飲む。悟はいちごオレを飲んでいる。
好奇心で鳥居を潜っていた悟が、こっちに戻りながらゴミ箱にいちごオレを捨てた。参道には一面、小石が敷いてある。社殿の両脇には、苔が生えた狛犬が鎮座している。
『ねぇ、意外と広くない?』
「うん」
『二手に分かれる?』
「うん」
『じゃ私は、本殿行くね』
元を崩せば派生は脆くなる。発生元の【地縛霊】を除霊すれば、呪霊の等級は下がる。
悟は考えごとしてるけど、呪霊は任せられる。そう判断して、一番霊力を感じた本殿に向かった。
*
『あれ、三級じゃん』
[ いた"ぃ〜いの い"だ"ぁ いの ]
祓除対象の三級呪霊。こいつは調査書に載っていた絵の呪霊にソックリだ。奥には【地縛霊】がいる。私が近づこうとした途端出てきた。まさか【地縛霊】を守ってる?
『どっちにしろ、祓うのが正解って訳だ』
真横にある"霊界"を開き、そこに腕を突っ込んで、置いておいた刀を引っ張り出す。
呪霊は驚き目を見開いたが、その場から逃げようとはしなかった。むしろ足に力を入れた。
『依存中、ってとこか?』
霊魂操術
皆伝式・中番
「悠宿」
瞬きを終えると呪霊は真っ二つに斬れていた。刀を"霊界"に戻す為に術式を発動しようとした時、上から強い呪力を感じ反射的に後ろへ飛ぶ。私が着地した音から数秒遅れ本殿が破壊された音が響く。瓦礫が直撃し刀は折れた。
「いったぁ……何ごと?」
『特級に刀折られた。戻らず戦って』
「おっけー!【犬神】参上!」
刀に宿したのが丁度【犬神】だった。そして宿した刀がたまたま特級呪霊に折られた。偶然に偶然が重なったとしても結果的に好都合だ。一つ仕事が増えちゃったんだから。
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霊魂操術
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片喰 - 五条先生…!一体、何円払ったんだ! 続きが待ち遠しいです! (2021年3月5日 17時) (レス) id: eddf3dedf8 (このIDを非表示/違反報告)
もここ - 面白いです!更新楽しみにしてます! (2021年3月5日 17時) (レス) id: a70ee3e6ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:二見 | 作成日時:2021年2月28日 21時