笑顔の仮面は知っている11【探偵チームKZ事件ノート】

第50話『不幸な人』 ページ7

杏奈side


「まずは、『神崎杏奈中傷事件』について」

若武くんの発言に、私は耳を疑う。

「何その事件名。私、初めて聞くんだけど」

もしかして、私が休んでる間に事件名がつけられたの？

彩ちゃんが口を開く。

「杏奈ちゃんが欠席していた際に、事件名は決まりました。」

そう言いながら、彩ちゃんは私に事件ノートを見せてくれる。

そこには、私が休んでいた間の会議内容が、丁寧な字で書かれていた。

周防光さんの家庭環境や性格、周防さんの兄である周防望さんの詳細が記されていた。

「この事件のゴールは、1、神崎杏奈への謝罪。2、周防光本人から罪を公表させる。3、美門翼へのストーカーをやめさせるために脅す材料を見つける。以上の3つです。これらの目的を達成するために私たちがやらなければならない事を考えるのが、今日の会議の目標だと思います」

彩ちゃんの言葉に、若武君は満足気に頷く。

さすが彩ちゃん。国語のエキスパート。

分かりやすい。

「どうしたら、性格のねじ曲がった周防光を攻略できるのか。誰か、意見あるか？」

黒木くんがサッと手を上げる。

「1番手っ取り早く目的1と2を解決するには、目的3にもあるように、脅すことだ。それが一番言うことを聞かせられる。だが、それだと前にアーヤが主張していた、『周防光を助ける』という目的が達成できなくなる」

周防光さんを助ける？

何の話？

私が首を傾げていると、黒木くんが教えてくれた。

「前の会議の時に、周防光の家庭環境に同情して、アーヤが周防光を助けたいって言ったんだ。だけど、俺たちはそれに反対した。そしたら、俺たちを納得させる理由を、次の会議までに見つけてくるってことで、話が纏まったんだ。」

私が彩ちゃんに目を向けると、彩ちゃんは少し申し訳なさそうな表情をしていた。

私に気を使ってるのかな？

気にすることないのに。

たしかに周防さんの家庭環境を知れば、彩ちゃんみたいな心優しい子だったら、同情してしまうのかもしれない。

「で、アーヤ。俺たちが納得できるような理由は見つかった？」

黒木くんが、艶やかな瞳でまっすぐに彩ちゃんを見る。

彩ちゃんは、意を決したように口を開く。

「周防さんは今のまま成長したら、確実に良くない方向に進んでいく。自分の目的を達成するために、周りを犠牲にしていく。これ以上、杏奈ちゃんや翼みたいな被害者を出さないためにも、私たちがここで周防さんを変えるべきだと思う」

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