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第37話『優しいあいつ』 ページ43

彩side


私と上杉くんは、しばらく見つめ合う。

やがて、上杉くんは小さな息をつき、目を閉じて空を仰いだ。

「じゃ、慰めてくれよ」

そう言って、悲しげな光を浮かべた目で私を見た。

ズキンと胸が痛む。

上杉くんがこんな顔をするなんて、今まで滅多になかった。

上杉くんの悲しみや後悔が、ひしひしと伝わってくる。

私が何も言えずに口をつぐんでいると、上杉くんが自嘲のような薄笑いを浮かべた。

「どうした。やっぱ、慰めの言葉が出てこないか?」

私が泣いてしまいそうだ・・・。

「上杉くんがそんな顔してたら、杏奈ちゃんが気にするよ」

「だろうな。優しいあいつのことだから、きっと、『襲われたのは自分が悪い』とか思ってるだろうし」

うん。杏奈ちゃんは、きっとそう思ってるだろうね。

「けどさ、」

上杉くんの瞳の奥が暗くなる。

「あいつを守るのが、俺に与えられた役割だったんだ。それなのに、俺は役割を放棄して、結果あいつが被害者になった。」

自分自身を傷つけるように、上杉くんは言葉を続ける。

「悪いのは俺だ。俺のせいで神崎は被害者になった。違うか?」

私はギュッと下唇を噛みしめる。

『違う』って言ってあげたいのに、言えない。

上杉くんの言っていることは、確かにその通りなのかもしれない。

「だから、神崎を傷つけた犯人は、どんな手を使ってでも捕まえる。それが俺に出来る精一杯の償いだ。たとえ死んででも捕まえる」

「死んででもって・・・」

「これは俺の責任だ。責任は俺がとる。」

そう言って、上杉くんは自転車を漕いで去っていってしまった。

なんだか、上手くいかなった・・・。

やっぱり、杏奈ちゃんみたいに魔法のような言葉をかけることは、私にはできない。



───『神崎を傷つけた犯人は、どんな手を使ってでも捕まえる。』



・・・あれじゃまるで、周りはどうなってもいいって言ってるように聞こえるよ。

上杉くんらしくなくて、なんだか胸騒ぎがする。

今回の事件、無事に解決するのかな・・・?

第38話『友人のために』→←第36話『彼女なら』



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(プロフ) - ゆたんぽ。さん» えー!嬉しすぎます!ありがとうございます! (2022年4月19日 17時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
ゆたんぽ。(プロフ) - 初コメ失礼します。いや、面白すぎませんか?更新楽しみにしてます! (2022年4月19日 15時) (レス) id: 00d669ff5e (このIDを非表示/違反報告)
@白猫雪(プロフ) - 澪さん» いえいえ!本編も、オリジナルも、楽しみにしてるのっ! (2022年4月16日 20時) (レス) id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - @白猫雪さん» ありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも頑張って更新するので、よろしくお願いします! (2022年4月15日 23時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
@白猫雪(プロフ) - 更新楽しみ〜!KZのオリジナルめっちゃ好き!澪ちゃんも、更新頑張ってね! (2022年4月15日 21時) (レス) @page50 id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年10月26日 22時

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