第34話『理由がいる』 ページ40
彩side
兄が弱点?
私たちはみんな、訳が分からず首を傾げる。
その様子を見て、黒木くんが説明を始める。
「さっきも言ったとおり、周防光の両親は多忙で、周防光は両親からの愛情不足により、ひねくれた性格になった。」
うん、そうだね。
「その両親がいない間、ずっと周防光のそばに居たのは、兄である周防望(すおう のぞむ)だ。周防光は、兄の言うことだけは昔から何でも聞いてきた。それは、兄も同様だ。両親からの愛情を十分に感じられなかった2人は、お互いだけを信じて生きてきたんだ」
なんだか、それって凄く可哀想。
私は、KZのみんなと深く関わって信頼しあうことで、知らなかったことを沢山知って、自分の世界を広げることができてる。
でも、周防兄妹はそういうことができていないんだ。
だからきっと、学校裏サイトとかで簡単に人を誹謗中傷したり、嫌がらせしたりするんだろうな。
「ねえ、周防さんたちのこと、助けてあげられないかな」
私がそう言うと、みんなはギョっとする。
そして、若武が声を荒らげた。
「おまえ、神崎に嫌がらせしてる奴のことを助ける気か!?」
すごい勢いに、私はびっくりして固まる。
「悪者に情を持ったら、ヒーローはその時点で負けだ」
そうだけど・・・。
だけど、何となくわかるんだ。
親からの愛情不足で、ひねくれたくなる気持ちが。
「アーヤはさ、」
黒木くんが、あでやかな瞳を私に向ける。
「周防兄妹をどう助けたいの?」
真っ直ぐに見つめられ、私は思わず視線を逸らす。
「明確な目標を提示しないと、みんなもアーヤの意見に賛同できないよ。なにせ、俺たちは大切な仲間を傷つけられて怒ってるんだ。助けるほどの価値が周防光にあるのか、そこが謎だね」
ちょっと冷たいけど、正しい意見だった。
感情任せに「助けよう」なんて言った自分が、とても子供に思えた。
「じゃあ、みんなが助けてもいいって思える理由があれば、協力してくれる?」
黒木くんがみんなに目を向け、みんなはそれぞれ頷いた。
それを確認してから、黒木くんはまた私に視線を戻した。
「理由があれば、ね」
私はシャーペンを握る力を少し強める。
「次の会議まで、時間を頂戴」
若武が頷く。
「じゃあ、次の会議までに俺たちを納得させる理由が見つからなければ、周防光を助けるのは無しだ」
ここまで言ったら、何とか理由を探さないと。
可哀想だからっていう理由じゃ、みんな絶対納得してくれないだろうし。
276人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「探偵チームKZ事件ノート」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
澪(プロフ) - ゆたんぽ。さん» えー!嬉しすぎます!ありがとうございます! (2022年4月19日 17時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
ゆたんぽ。(プロフ) - 初コメ失礼します。いや、面白すぎませんか?更新楽しみにしてます! (2022年4月19日 15時) (レス) id: 00d669ff5e (このIDを非表示/違反報告)
@白猫雪(プロフ) - 澪さん» いえいえ!本編も、オリジナルも、楽しみにしてるのっ! (2022年4月16日 20時) (レス) id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - @白猫雪さん» ありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも頑張って更新するので、よろしくお願いします! (2022年4月15日 23時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
@白猫雪(プロフ) - 更新楽しみ〜!KZのオリジナルめっちゃ好き!澪ちゃんも、更新頑張ってね! (2022年4月15日 21時) (レス) @page50 id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:澪 | 作成日時:2021年10月26日 22時