第31話『ごめん』 ページ37
彩side
「なんで武器が確定してるんだ?」
若武が聞き、黒木くんは肩をすくめる。
「現場に落ちてたらしい」
通り魔って、意外とマヌケだね。
「運良くたまたま人が通りかかって、通り魔は逃げていった。たぶん、それで焦ってナイフを放ってしまったんじゃないかというのが見解だ」
私は黒木くんの言葉をメモしながら思った。
でも、杏奈ちゃんって耳がいいから、後ろから通り魔が近づいてきたら気づくんじゃないのかな?
本人も、気づけるって言ってたし。
私はスっと手を上げる。
「少しいいですか」
若武は、私に目を向けて頷いた。
発言の許可を貰い、私は前に杏奈ちゃんが言っていたことを話す。
通り魔が近づいてきたら絶対に気づけると言っていたのに、どうして気づけなかったんだろう。
私の話を聞くなり、上杉くんが暗い表情で言う。
「考えられる可能性は、2つだな。1つは、気づいていたけど逃げる速度が間に合わなかった。もう1つは、」
そう言いながら、気の毒そうに片目を細めた。
「音を気にする余裕すらないほど、なにか悩んで考え事をしていたか。」
みんなが息を呑む。
杏奈ちゃんがそんなに悩んでる理由なんて、周防さんからの嫌がらせ以外にない。
全然表情に出してなかったけど、かなり精神的に追い込まれてたのかもしれい。
変な噂を流されてメンタルが弱くなってる時に、通り魔にまで襲われて、身体まで傷つけられて。
杏奈ちゃん、苦しんでるだろうな・・・。
早く会いたい。話を聞いて、私にもできることをしてあげたい。
黒木くんが、話の続きをする。
「シースナイフには指紋が一切ついていなかった。どこにでもある一般的なキャンプナイフだし、誰が所持していてもおかしくないから、犯人の情報も不明。ただ、襲われた時に、通り魔が神崎にこう言ったらしいんだ。『ごめん』って」
自分から襲っといて、謝ったってこと?
意味がわからない。
「神崎を襲ったのは、犯人の意思じゃなかったってこと?」
小塚くんの言葉に、黒木くんは軽く首を横に振る。
「分からない。けど、今まで襲われた女の子たちは、誰一人としてそんな風に謝られたりはしなかった。」
はて。じゃ、なんでだろ。
若武が腕を組んで考え込む。
「通り魔は、神崎の知り合いだったとか?」
みんなが考え込んでしまい、部屋はシンと静まり返る。
その沈黙を破ったのは、翼だった。
「とにかく、それは調査していけば分かるでしょ」
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澪(プロフ) - ゆたんぽ。さん» えー!嬉しすぎます!ありがとうございます! (2022年4月19日 17時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
ゆたんぽ。(プロフ) - 初コメ失礼します。いや、面白すぎませんか?更新楽しみにしてます! (2022年4月19日 15時) (レス) id: 00d669ff5e (このIDを非表示/違反報告)
@白猫雪(プロフ) - 澪さん» いえいえ!本編も、オリジナルも、楽しみにしてるのっ! (2022年4月16日 20時) (レス) id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - @白猫雪さん» ありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも頑張って更新するので、よろしくお願いします! (2022年4月15日 23時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
@白猫雪(プロフ) - 更新楽しみ〜!KZのオリジナルめっちゃ好き!澪ちゃんも、更新頑張ってね! (2022年4月15日 21時) (レス) @page50 id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2021年10月26日 22時