笑顔の仮面は知っている10【探偵チームKZ事件ノート】

第21話『脅す材料』 ページ27

杏奈side


私は、この状況をどうしたいんだろう。

改めて考えてみると、よく分からない。

噂の誤解をときたいって事しか考えてなかった。

どうするのが正解なのかな。

何も思い浮かばないってことは、私は周防さんに制裁を加えなくてもいいと思ってるのかな。

自分の意見が、イマイチよく分からない。

「俺は、」

私が考えていると、翼が先に声を上げた。

「まずは、杏奈への謝罪。そして自分の口から、嘘の噂を流して杏奈に嫌がらせしていたのは自分だと公表させる。このふたつは絶対にさせたい」

その目には、強い光があった。

若武くんが頷く。

「その2つは絶対に達成させよう。神崎は何かないのか？」

話を振られ、私は必死に考える。

その時、黒木くんから聞いた話を思い出した。

「そういえば、翼って周防さんからストーカー被害に遭ってるんだよね？」

私の言葉に、みんなは一斉に翼の方を見た。

翼は私に目を向ける。

「なんで知ってるの」

「黒木くんから聞いた」

若武くんが翼に顔を寄せる。

「おいっ！ストーカー被害って、何だっ！？吐け！」

翼はため息をこぼす。

「これは、1ヶ月くらい前からずっとなんだけど、」

みんなは声を揃える。

「1ヶ月！？」

思ったより長期間続いていたことに、驚きを隠せないみたいだった。

翼は頷きながら、言葉を続ける。

「机や靴箱にプレゼントや手紙が入ってたり、一人で帰ってたら後ろから付けられてたり、多分写真もとられてる。帰り道とかは毎回撒いてるから、さすがに家までは知られてないと思うけど。それが全部、周防さんの仕業なんだ」

若武くんが、ゾッとしたように言う。

「女、恐ぇ！」

皆はその通りだと言うように頷き、女である私と彩ちゃんは、顔を見合わせて何となくため息をついた。

「前に一度注意はしたんだ。やめてくれって。でも、聞き入れて貰えなかった。それどころか、俺に気づかれたことを喜んでる感じだった」

典型的なストーカーじゃん。

ホス狂とかによくいるタイプの女じゃん。

「私は、翼へのストーカー行為をやめさせたい。口約束だけじゃまたやっちゃうかもしれないから、もう二度とストーカーなんてできないように、脅しの材料も必要だと思う」

小塚くんが驚いたような顔をした。

「神崎にしては、珍しく過激な意見だね」

上杉くんは、嬉しそうに口元に笑みを浮かべた。

「いいじゃん。今後のためにも、脅すネタは必要だ」

皆も納得したように顔を見合せた。

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