第18話『露骨』 ページ24
杏奈side
上杉くんと別れたあと、教室に行くと、私が入った瞬間にみんなが静まった。
そして、チラチラと私に視線を向けながら、噂話をしている。
──ドクンッ
ああ・・・嫌だな。
この感じ、前にも経験したことがある。
──『今日から杏奈ちゃんのことは無視だからね』
嫌な事を思い出し、私はぎゅっと拳を握る。
大丈夫・・・大丈夫・・・。
あの時とは違う。
・・・大丈夫。
私は姿勢を正して、堂々と教室に入り、自分の席に着く。
いつも仲良くしている隣の子に目を向けると、その子は怯えたように肩をビクッと揺らした。
関わって欲しくないという気持ちが、態度で伝わってくる。
露骨だな。
私はカバンから教材を出し、授業の準備をする。
「よくあんな堂々とできるよな、あの性悪女」
そんな声に、一瞬、体が硬直する。
「神経図太いな〜。さすが、彼氏に近づく女に嫌がらせするだけあるわ」
どちらかといえば、嫌がらせされてるのは私なんだけど。
ていうか、聞こえるようにわざと言ってるよね、これ。
反応するべきか、どうなのか。
喧嘩を売ってきた男の子に目を向けると、その子はニヤニヤして私を見ている。
イラッ。
これは、喧嘩を買えということだよね。
私は立ち上がり、その男の子の前まで行く。
予想外だったのか、男の子は目を丸くして私を見つめている。
「噂を鵜呑みにして悪口言ってくる貴方と、勝手な噂を流されて迷惑してる私、」
私は男の子に笑顔を向ける。
「ほんとに性悪なのはどっちか、試してみる?」
男の子はバツが悪そうな顔をして、私と距離をとる。
「なんだよ・・・ちょっとからかっただけだろ!」
「そうね。私も、ちょっとからかっただけだよ」
すると、教室に嘲笑が広がる。
「喧嘩ふっかけといて、言い負かされてやんの」
「ダセェ」
周りの視線に耐えきれなくなったのか、男の子は教室から出ていってしまった。
・・・悪口を言われても私は逃げ出さなかったのに、彼は簡単に逃げるんだな。
私だって、本当は逃げ出してやりたい。
何も聞こえないふりをしていたい。
嫌でも聞こえてくる雑音に、いつも耳を塞いでいる。
全てが聞こえる私は逃げられないのに、少しの雑音から逃げられる彼が羨ましい。
今、私が教室を出たとしても、他の塾生からの視線が向けられるだろう。
刺すような視線は、どこに行っても同じだ。
それにじっと耐えている私は、彼の言う通り、神経が図太いのかな。
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澪(プロフ) - ゆたんぽ。さん» えー!嬉しすぎます!ありがとうございます! (2022年4月19日 17時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
ゆたんぽ。(プロフ) - 初コメ失礼します。いや、面白すぎませんか?更新楽しみにしてます! (2022年4月19日 15時) (レス) id: 00d669ff5e (このIDを非表示/違反報告)
@白猫雪(プロフ) - 澪さん» いえいえ!本編も、オリジナルも、楽しみにしてるのっ! (2022年4月16日 20時) (レス) id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - @白猫雪さん» ありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも頑張って更新するので、よろしくお願いします! (2022年4月15日 23時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
@白猫雪(プロフ) - 更新楽しみ〜!KZのオリジナルめっちゃ好き!澪ちゃんも、更新頑張ってね! (2022年4月15日 21時) (レス) @page50 id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2021年10月26日 22時