第78話『雀の涙』 ページ3
杏奈side
「あの、」
ノックの音がし、半ば開いたドアから島崎さんが顔をのぞかせる。
「七鬼さんが、いらっしゃいました」
島崎さんの後ろから姿を現した七鬼くんは、睨み合っている2人を見て、興味深そうに菫色の瞳を光らせた。
「何のバトル？」
上杉くんが、ため息交じりに答える。
「孵化した雀を外に放そうとしたら、出てかねーってことが発端」
七鬼くんは、ふっと笑った。
「俺にやらせろよ。いいだろ？」
そういった私たちの同意を取り、わずかに唇を尖らせると、そこからヒュッという短い音を漏らした。
瞬間、若武くんの肩に止まっていた雀が、くるっと振り返って七鬼くんの方を見る。
七鬼くんが片腕を差し出すと、素早く飛んでいってその手の甲に留まった。
七鬼くんは、自分の手を顔の前に動かし、雀の嘴に触れそうなほど近づけて、ゆっくりと唇を動かす。
そこからやさしい呼吸のような、静かな吐息のようなものが流れ出た。
雀は、じっと七鬼くんの顔を見つめていたけれど、やがて羽ばたいてその手を離れ、若武くんの頭上に近づいた。
若武くんの頭の周りを回り、肩に留まって身を乗り出すようにして顔を覗き込む。
その目には、ほんのわずかな涙が浮かぶのを、私は見た。
まるで光の粒のような、小さな涙だった。
それがこぼれて若武くんの胸に染み込む。
若武くんが驚いていると、雀は羽を広げて舞い上がり、もう一度だけ若武くんの周りを回って、そして窓から庭に出た。
庭木の間を縫い、白いフェンスを越えて外に向かう。
私たちは、それを追って庭に出た。
小塚くんが、感嘆したように首を横に振る。
「すごいね。どうやったの？」
七鬼くんは微笑んだ。
「説得しただけ」
私は、空に舞い上がる雀を見つめる。
「ああ・・・」
若武くんが切なそうな声を漏らす。
「帰ってく」
空に高く舞い上がった雀は、小さな点のようになって、一瞬輝き、そして見えなくなった。
「帰ってった・・・」
そう呟きながら若武くんは、芝生の上にしゃがみこむ。
「俺、もうあいつに会えないんだ！」
普通にめっちゃ可哀想。
雀の涙を、私は確かに見た。
雀も、お別れが寂しかったのかな。
「なんて顔だよ。雀に笑われるぜ」
黒木くんがそう言い、翼も口を開いた。
「若武、元気だしなよ」
小塚君が頷き、上杉君もしかたなさそうに言った。
「俺たちがいるじゃん」
やっぱり、上杉くんがその言葉を言うと違和感がすごい。
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澪(プロフ) - ゆたんぽ。さん» えー！嬉しすぎます！ありがとうございます！ (2022年4月19日 17時) (
レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
ゆたんぽ。(プロフ) - 初コメ失礼します。いや、面白すぎませんか？更新楽しみにしてます！ (2022年4月19日 15時) (レス) id: 00d669ff5e (このIDを非表示/違反報告)
@白猫雪(プロフ) - 澪さん» いえいえ！本編も、オリジナルも、楽しみにしてるのっ！ (2022年4月16日 20時) (レス) id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - @白猫雪さん» ありがとうございます！とっても嬉しいです！これからも頑張って更新するので、よろしくお願いします！ (2022年4月15日 23時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
@白猫雪(プロフ) - 更新楽しみ〜！KZのオリジナルめっちゃ好き！澪ちゃんも、更新頑張ってね！ (2022年4月15日 21時) (レス) @page50 id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：澪 | 作成日時：2021年10月26日 22時
