第15話『センパイ』 ページ20
杏奈side
その日の昼休み。
人通りの少ない廊下の隅で、黒木くんに電話をかける。
黒木くんは、すぐに電話に出てくれた。
「もしもし、黒木くん。今、ちょっと時間ある?」
「全然大丈夫だよ。神崎が学校から電話かけてくるなんて、珍しいな」
私が話を切り出すより先に、黒木くんが言う。
「美門から聞いたのか?噂のこと」
すごいね黒木くん。めっちゃエスパー。
「聞いたよ。」
サラッと答えると、黒木くんは声を少し柔らかくして聞いてきた。
「どう思った?」
それ、本人に聞くこと・・・?
私は、壁にもたれかかって、その場に座る。
「ムカついた」
それが素直な意見だった。
「私が何にムカついてるか分かる?」
私の悪口を書かれたとか、嘘ばかり書かれていたとか、そんなことじゃない。
「間違っているのは、明らかに向こうなのに・・・。それなのに、翼が自分を責めるんだ。私に何度も謝ってきたんだよ。」
電話越しに、黒木くんが息を呑む様子が伝わってくる。
「くだらない言葉と、くだらない人たちのせいで、翼が自分自身を責めるようになる。自分の存在を否定し始める。それが、どうしても許せない」
私は膝を抱えて、顔をうずめる。
「悔しい・・・」
翼のプライドを傷つけるのは、翼自身じゃない。
いつだって、周りの言動だ。
「美門に、自分を否定させたりしない。」
黒木くんが、キッパリと言い放った。
「そのために、俺たちがいるんだ。そうだろ?」
力強い言葉に、心のモヤがスっと晴れていくような気分になる。
黒木くんの言葉は、まるで魔法のようだ。
「うん・・・そうだね」
道標のように、私の進む道を教えてくれる。
しっかりしなきゃ。
私が暗くなってちゃダメだ。
「黒木くん、聞きたいことがあるの。翼に告白してきたっていう女の子のことで、知ってることがあったら教えて欲しい」
「任せろ。もう、ばっちり調べ上げてるさ」
得意げにそう言った黒木くんは、なんだか少し可愛く思えた。
さすが黒木くん。
「美門に告白した女の子の名前は、周防 光(すおう ひかり)。筑波大学附属中学に通う2年生だ」
めっちゃ頭いいじゃん。しかも、1個上だ。
「もともと秀明の生徒だったけど、美門がハイスペックに移ったすぐ後に、周防さんもハイスペックに移っている。」
完全に、翼を追いかけてハイスペックに入ったんだね。
「美門を好きになったきっかけは、」
黒木くんは、ちょっと憂鬱そうに言葉を続けた。
きっかけは?
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澪(プロフ) - ゆたんぽ。さん» えー!嬉しすぎます!ありがとうございます! (2022年4月19日 17時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
ゆたんぽ。(プロフ) - 初コメ失礼します。いや、面白すぎませんか?更新楽しみにしてます! (2022年4月19日 15時) (レス) id: 00d669ff5e (このIDを非表示/違反報告)
@白猫雪(プロフ) - 澪さん» いえいえ!本編も、オリジナルも、楽しみにしてるのっ! (2022年4月16日 20時) (レス) id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - @白猫雪さん» ありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも頑張って更新するので、よろしくお願いします! (2022年4月15日 23時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
@白猫雪(プロフ) - 更新楽しみ〜!KZのオリジナルめっちゃ好き!澪ちゃんも、更新頑張ってね! (2022年4月15日 21時) (レス) @page50 id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2021年10月26日 22時