笑顔の仮面は知っている10【探偵チームKZ事件ノート】

第9話『綺麗』 ページ14

杏奈side


それから1週間ほどが経った。

なんだか最近、秀明で周囲から視線を感じる。

KZの皆みたいに好意のある視線というよりは、敵意に近いような目。

気のせいだったらいいけど、それにしては、みんなの態度があからさま過ぎる。

今まで仲が良かった子も、少しよそよそしくなった気がする。

秀明の授業が終わると、玄関でいつも上杉くんが待ってくれている。

あれから毎日、上杉くんが家まで送ってくれているんだ。

彩ちゃんの方は、黒木くんあたりが送っているみたいだ。

いつものように、上杉くんと肩を並べて夜道を歩く。

「はぁ・・・」

思わず大きなため息をついてしまう。

「大きいため息だな。疲れてるのか？」

「なんか・・・最近生きづらくて」

上杉くんは、困ったように頬をひきつらせる。

「そんなに重たい悩みだとは思わなかった。ま、そういうのは黒木に相談しろよ」

私はクスッと笑う。

「俺に相談しろって言わないの？」

私の笑顔を見て少し安心したのか、上杉くんはふっと頬を緩めた。

「俺に人生相談しても、解決しねぇよ」

あまりに綺麗な微笑みに、私は見とれてしまう。

上杉くんって、繊細で綺麗な顔立ちや雰囲気をしている。

翼とは、また違う美しさがある。

「上杉くんって、綺麗だよね」

真顔で言った私に、上杉くんは冷めた目を向ける。

氷点下の眼差しに、私は震え上がる。

「そんな目で見ないでよー。そう思ったんだから仕方ないじゃない」

上杉くんは呆れたように息をつく。

「綺麗とかいうのは、美門に当てはまる言葉だろ。」

「上杉くんも十分綺麗だよ」

私は、上杉くんをじっと見つめる。

すると、上杉くんは照れたように横を向いた。

そういえば前に、私がじっと目を見て話してくるのが困るって言ってたっけ。

上杉くんって、結構照れ屋さんだよね。

「男の子って、綺麗って言われても嬉しくないの？」

「人によるだろ」

それもそうか。

「そもそも、男に綺麗ってあんまり言わないしな」

たしかに、綺麗って女の人の方が当てはまるイメージかも。

「上杉くんが綺麗と思う人って、どんな人なの？」

上杉くんは少し間を置いてから、「さあな」と言って、適当にはぐらかした。

上杉くんって、クールだなぁ。

第10話『悪意のある噂』→←第8話『上杉と黒木』

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す