第7話『知らない』 ページ12
彩side
笑っている私を見て、杏奈ちゃんは優しく微笑んだ。
「怖くなくなった?」
うん、全然怖くなくなったよ。ありがとう。
「神崎って、場の雰囲気を動かすのが上手いよね。若武とは違う意味で、会話術が巧みだ」
小塚くんに褒められ、杏奈ちゃんは照れたように笑う。
「嬉しい。ありがとう」
若武が声を上げる。
「俺とは違う意味で、ってどういう意味だよ」
すると、上杉くんが鼻で笑う。
「お前みたいな詐欺師と違って、神崎は、人を騙すような事はしねぇってことだろ」
「なんだと上杉!やんのか!」
取っ組み合いになりそうになった若武と上杉くんを、黒木くんが止める。
いつものパターンだ。
杏奈ちゃんはクスクスと笑う。
「若武くんと上杉くんってば、すぐに喧嘩するんだから。ほんと、仕方のない人たちだね」
楽しそうに笑う杏奈ちゃんはとても可愛くて、私はニッコリする。
杏奈ちゃんは、私が通り魔に狙われるか心配してくれたけど、杏奈ちゃんの方が可愛いから狙われそうで心配だ。
「みんなで帰ることってなかなかないから、久しぶりに帰ると楽しいね。翼がいたら、もっと楽しかったのに」
そう言った杏奈ちゃんの表情は、どこか悲しげだった。
翼がハイスペックに行っちゃったこと、やっぱり杏奈ちゃんも寂しいと思ってるのかな。
杏奈ちゃんはいつも笑顔の分、何を考えてるかよく分からないからなぁ。
翼がハイスペックに行くのを決めた時だって、全然平気そうだった。
でも、私たちの知らないところで、悲しんだりしてるのかもしれない。
もっと、杏奈ちゃんが私たちに本心をさらけ出せるようになったらいいのにな。
話していると、いつの間にか私の家に着いた。
「じゃあ、私ここだから。送ってくれて、ありがと」
杏奈ちゃんが私に手を振る。
「じゃあね、彩ちゃん。お疲れ様!」
「うん、お疲れ様。また明日ね」
みんなは、話しながらまた歩き始めた。
私はその背中を見つめる。
杏奈ちゃんを囲むようにして仲良く話す姿は、とても微笑ましかった。
私が初めてみんなと出会った時は、仲良くなるのに時間がかかったけど、杏奈ちゃんはあっという間だったな。
周りの空気に溶け込んで、いつの間にか杏奈ちゃんを中心になるような形になっている。
それはやっぱり、杏奈ちゃんが魅力的だからなんだろうな。
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澪(プロフ) - ゆたんぽ。さん» えー!嬉しすぎます!ありがとうございます! (2022年4月19日 17時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
ゆたんぽ。(プロフ) - 初コメ失礼します。いや、面白すぎませんか?更新楽しみにしてます! (2022年4月19日 15時) (レス) id: 00d669ff5e (このIDを非表示/違反報告)
@白猫雪(プロフ) - 澪さん» いえいえ!本編も、オリジナルも、楽しみにしてるのっ! (2022年4月16日 20時) (レス) id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - @白猫雪さん» ありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも頑張って更新するので、よろしくお願いします! (2022年4月15日 23時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
@白猫雪(プロフ) - 更新楽しみ〜!KZのオリジナルめっちゃ好き!澪ちゃんも、更新頑張ってね! (2022年4月15日 21時) (レス) @page50 id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2021年10月26日 22時