第77話『若武VS小塚』 ページ2
杏奈side
土曜日。
若武くんの家に行くと、私以外のKZメンバーがもう集まっていた。
部屋の壁には、『若武ジュニアの巣立ちを祝う会』と書かれた横断幕が張られている。
この巣立ちの会には七鬼くんも呼んでるって話だけど、七鬼くんはまだ来ていない。
若武くんの肩には雀が乗っている。
そして、何やら問題が起こっているようだった。
どうやら、雀が何度巣立ちさせようとしても、行こうとしないようだった。
「もうしょうがないってことで、ここに置いて飼ってもいいだろ。そりゃ自然に戻すのが一番だろうけどさ、何にでも例外はありじゃん。いいだろっ!?」
若武くんが、必死にそう主張する。
「あのさぁ、」
上杉君が冷ややかなまなざしで、壁の横断幕を見上げる。
「ああまで派手にぶち上げて、俺ら集めて、この始末どうつける気だ」
若武くんは横断幕の下に歩み寄ると、ジャンプしてその一部に手をかけ、破り取った。
「見なかったってことで。集合は、会議に切り替えだ。KZ大憲章を制定しなくちゃならないだろ」
上杉くんが舌打ちする。
「詐欺師め」
小塚くんが立ち上がる。
「だめだよ。この雀は、自然に返さなきゃいけない。ここに置くのは、正しいことじゃないよ。僕は認めない」
私は、小塚くんがこんなにはっきり自分の意見を口にすることに驚いた。
こんなふうに意見することも、ちゃんとできるんだ。
黒木くんが、ほうっと大きな息を吐く。
「若武、あきらめるんだね。小塚先生が『正しいことじゃない。』って言い出したら最後、絶対、後に引かないから」
小塚くんは、本当に生き物が好きなんだろうな。
若武くんは、クサクサするといったように片手で髪をかき上げた。
「俺が引き留めてるわけじゃないじゃん。こいつが出ていかないんだぜ。ここにいたいんだ。いいじゃないか、1羽ぐらい人間と同居してる雀がいたって」
小塚くんがキッパリと首を横に振る。
「だめだ。この雀には、自然の中で生きて、相手を見つけて繁殖しながら一生過ごす権利がある。ここにいたら人間としか接触出来ない。それは、雀にとって不幸なことだよ」
若武くんも、1歩も引かなかった。
「大丈夫だよ、俺が幸せにしてやるから」
「若武には、野生の鳥を幸せにすることなんかできない。人間と鳥じゃ、幸せの形が違うんだ」
若武くんVS小塚くんという、今までにない構図。
小塚くんのこういうところ、私、結構好きかもしれない。
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澪(プロフ) - ゆたんぽ。さん» えー!嬉しすぎます!ありがとうございます! (2022年4月19日 17時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
ゆたんぽ。(プロフ) - 初コメ失礼します。いや、面白すぎませんか?更新楽しみにしてます! (2022年4月19日 15時) (レス) id: 00d669ff5e (このIDを非表示/違反報告)
@白猫雪(プロフ) - 澪さん» いえいえ!本編も、オリジナルも、楽しみにしてるのっ! (2022年4月16日 20時) (レス) id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - @白猫雪さん» ありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも頑張って更新するので、よろしくお願いします! (2022年4月15日 23時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
@白猫雪(プロフ) - 更新楽しみ〜!KZのオリジナルめっちゃ好き!澪ちゃんも、更新頑張ってね! (2022年4月15日 21時) (レス) @page50 id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2021年10月26日 22時