第74話『愚かで惨めな』 ページ49
杏奈side
「あっ!」
上杉くんが声を上げる。
「もう秀明行かねーと、テストに間に合わん!」
ほんとだ!
「裏口から出ろよ。その方がバス停に近い」
七鬼くんに言われて、みんなは挨拶もそこそこに家を飛び出した。
私は家を出る前に、七鬼くんに伝えたいことを伝える。
「ちょっとでもいいから、学校来なよ。もっと七鬼くんの世界は広げるべきだと思う。閉じこもってたら分からないことだって、たくさんあるんだから。それじゃあね、ありがとう!」
それで、走ってバス停まで行こうとしたんだけど・・・走れなかった。
先頭にいた翼が、両腕を左右に突き出して私たちを止めたんだ。
若武くんがつんのめり、その場に転がる。
「何だよっ!?」
叫ぶように言った若武くんに飛びつき、その口を押えて翼は、目で道の向こうを指した。
「男塚だ」
私たちは、いっせいに翼の視線の方向を追う。
信号のそばに1人の女性が立っていて、七鬼君の家の門を見つめていた。
「噂の美人って、あれかよ。たいしたことないじゃん」
上杉くんはそう言ったけれど、私の目には十分すぎるほど綺麗に見えた。
長い髪で細身でスタイルが良く、知性的な感じのする女の人だった。
「今ここにいるってことは、七鬼のメール見て、飛んできたんだろうな」
黒木くんの声には同情が滲んでいた。
「七鬼に会いたいけれど、自分のした事を考えると、会えないってとこだね」
自分の憎しみに引きずられて、本当に大切なものを、この人は見失ってしまったんだろうな。
「おい、マジ遅れるぜっ!」
若武くんが叫び、私たちは、ハッと我に返った。
「俺たちが参加しなかったら、トップの座をハイスペックに持ってかれるじゃんよ」
上杉くんが鼻で笑う。
「おまえなんか、戦力外だろーが」
一気に戦闘モードに突入する2人の肩に、黒木君が手をかけた。
「とにかく行こうぜ」
それで私たちは、慌てて走り出しだ。
バス停まで駆けつけて、ハァハァ息をつきながらバスを待った。
「俺、テスト中に、寝そう」
「僕、対策練ってる時間、全然なかった」
「そこは実力でしょ」
「みっともねー成績、取んなよ」
私、絶対やばい点数とりそう・・・。
翼が私を見てくすくす笑う。
「そんな死にかけの顔してないで、バスの中で出そうなところ教えるから、そこだけでも覚えなよ」
私はパアッと表情を明るくする。
「翼様〜!!神っ!」
まあ、なんとかなるよね!
118人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「原作沿い」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
?かなかな - よろしくお願いします!澪さん!美門くんは誰がみてもかっこいい(笑)確かにかも😊外見だけじゃなくて、中身もいいもん!美門くんはまわりに気を配ったりもしてるからさらにね。なんか、あったことあるみたいになってる(笑) (2021年10月26日 19時) (レス) id: d59fc0899f (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - ?かなかなさん» 名前の読み方は「みお」です!美門はもう誰が見てもかっこいいので私もすごく好きです笑 (2021年10月24日 11時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
?かなかな - 凄い!見てみたら、お話増えていたし、澪さんから、お返事きてた!ちなみにこの『澪』って、どう読むんですか?「みお」とかですかね?それにしても、澪さんも美門君好きですかぁ〜。やっぱり人気な方ですね。美門君。私は、どっちかというと美門君の考え方に憧れてる? (2021年10月24日 10時) (レス) @page41 id: d59fc0899f (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - 環さん» たまちゃんありがとう!今回は恋愛の絡みいっぱいにしてみました!喜んでもらえて嬉しいです! (2021年10月23日 12時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 澪ちゃんんんんん!最高、神レベルの最高!!!!!きゅんきゅんだよお!!最近いっぱい更新してくれてありがとう!!楽しみにしてますっ!!!!! (2021年10月23日 10時) (レス) @page41 id: 940f9d3174 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:澪 | 作成日時:2021年7月6日 22時