第50話『男塚』 ページ25
杏奈side
「打つ手なし、だな」
若武くんが力なく顔を上げ、行き詰まって気持ちが重くなっている私たちを見回した。
「別の情報を持ってるヤツ、いる?」
美門くんが小さく手を上げる。
「ハイスペックで、兵藤勇太のクラスに潜入した」
おお。
「学校でもやる気なさそうな奴だけど、塾でも同じ。で、接触して聞いてみたんだ。この塾、楽しいかって。そしたら意外なことに、すげえ楽しいって言うんだ。理由は、女だって」
は?
「ハイスペックには、評判の美人講師がいるんだ。ハイスペックの広告塔って言われてる美女」
へえ!見てみたいかも。
「俺も見かけたけど、確かにきれいでスタイルも抜群。正規の講師じゃなくてアルバイトみたいだけど、IT界の有名人で、ハイスペックでもIT講座を持ってるんだって」
黒木くんがちょっと笑った。
「その女、有名だよ。名前、男塚っていうんだろ?」
なかなかかっこいい苗字だなぁ。名前だけ聞いたら男の人かと思っちゃう。
その時、彩ちゃんが棒立ちになった。
「アーヤ、何、興奮してんだ」
彩ちゃんはアタフタした様子で言う。
「その人、七鬼くんが小学生の時に、ITのキャンプでチームを組んだ人だよ。トップガン並みの能力を持っていて、尊敬してるって言ってた。わからないことは今も教えてもらってるって」
若武くんが叫んだ。
「七鬼がかばってるのって、そいつじゃないのかっ!?」
上杉くんが切れ上がった目に、冷ややかな光をまたたかせた。
「そいつなら、七鬼のブロックも余裕で突破できそうだよな」
美門くんも頷く。
「七鬼からの質問の返事に、マルウェアを仕込み、まず七鬼のパソコンを乗っ取って踏み台にし、そこからいくつかのサーバーを経由し、マルウェアの入った文書作成ソフトをインターネット上にアップする。それをインストールした人間の1人が上杉なんだ」
そっか。そういう流れだったんだ。
「きっと七鬼は、」
黒木君は、しみじみとした口調になった。
「上杉から送ってもらったデータを解析しているうちに、自分のパソコンが踏み台にされたことを知ったんだ。で、パソコン内を調べて、男塚のメールにたどりついた。自分を利用したのが男塚だってわかって、相当ショックだったと思うよ。でも、とっさにかばったんだ、これまで尊敬してきたからだろうな。あの時、最後に上杉にアドバイスを残したのは、自分が踏み台にされたせいで上杉に迷惑をかけることになったから、謝罪の気持ちだよ、きっと」
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?かなかな - よろしくお願いします!澪さん!美門くんは誰がみてもかっこいい(笑)確かにかも😊外見だけじゃなくて、中身もいいもん!美門くんはまわりに気を配ったりもしてるからさらにね。なんか、あったことあるみたいになってる(笑) (2021年10月26日 19時) (レス) id: d59fc0899f (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - ?かなかなさん» 名前の読み方は「みお」です!美門はもう誰が見てもかっこいいので私もすごく好きです笑 (2021年10月24日 11時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
?かなかな - 凄い!見てみたら、お話増えていたし、澪さんから、お返事きてた!ちなみにこの『澪』って、どう読むんですか?「みお」とかですかね?それにしても、澪さんも美門君好きですかぁ〜。やっぱり人気な方ですね。美門君。私は、どっちかというと美門君の考え方に憧れてる? (2021年10月24日 10時) (レス) @page41 id: d59fc0899f (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - 環さん» たまちゃんありがとう!今回は恋愛の絡みいっぱいにしてみました!喜んでもらえて嬉しいです! (2021年10月23日 12時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 澪ちゃんんんんん!最高、神レベルの最高!!!!!きゅんきゅんだよお!!最近いっぱい更新してくれてありがとう!!楽しみにしてますっ!!!!! (2021年10月23日 10時) (レス) @page41 id: 940f9d3174 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2021年7月6日 22時