第64話『俺の彼女』 ページ39
杏奈side
「ここだ」
美門くんが立ち止まったのは、まだ新しい一戸建ての前。
フェンスや塀はなく、兵藤という表札のかかった門柱だけが立っていて、そのすぐそばに玄関があり、脇に自転車と車が停まっていた。
2階建てで、1階に窓が2つあり、2階にも2つ。
どの窓にも雨戸はなく、遮光カーテンの隙間から室内の明かりが漏れてきていた。
あたり一帯には、同じような造りの家が立ち並んでいる
美門くんがドアフォンを押して言った。
「すみません。僕は勇太君と同じ塾の美門といいます。勇太君、いらっしゃいますか」
何の返事もなく、ブツっと通話が切れる。
え・・・失敗?
私たちが顔を見合わせていると、家の中から女の人の声が響いてきた。
「勇太、友達だよ。早く出な」
2階の明かりの一つが消え、やがて玄関のドアが開いて、兵藤が姿を見せる。
私はほっとした。
「おう、何だよ」
そう言いながら近寄ってきた兵藤は、相変わらずだるそうだった。
兵藤は私に気づくと、驚いたような顔になる。
すると、美門くんは私の肩を抱いて、自分の方に引き寄せた。
突然のことに、私は目を見開いて固まってしまう。
「これ、俺の彼女」
私は息を呑む。
な、にを・・・。
「兵藤に、紹介しておきたかったんだ」
これも、美門くんの作戦・・・!?
「わざわざ連れてこなくてもよかったのに」
戸惑った様子の兵藤に、美門くんは微笑む。
「いや今日、兵藤の片想いのこと、いろいろ聞いたからさ。俺も話しとかないと公平じゃないと思って」
兵藤は、感心したような顔つきになった。
「おまえ、義理堅いな。そういう奴、俺、結構好きだよ」
美門くんは微笑みながら、はっと思い出したような様子を見せる。
「彼女っていえば、兵藤の彼女、IT講座持ってるんだろ。神崎も、IT関係の講座に参加したいって言ってるんだけど、」
言ってないけど・・・。
「兵藤の彼女の講座って、どう?」
兵藤は、やってられないといった表情になった。
「すげぇキツいって。やめといた方がいいぜ」
へぇ、そうなんだ。
「あの人はさ、元は秀明で講師してたんだ。その時、保護者とトラブって、秀明側から保護者に謝罪するように言われたらしい。それでカッとして辞めて以来、秀明を恨んでるんだ。首都圏でトップのシェアを持つ秀明を、その地位から引きずり下ろしたい一心でハイスペックの講師になったわけ」
すごい執念だね。
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?かなかな - よろしくお願いします!澪さん!美門くんは誰がみてもかっこいい(笑)確かにかも😊外見だけじゃなくて、中身もいいもん!美門くんはまわりに気を配ったりもしてるからさらにね。なんか、あったことあるみたいになってる(笑) (2021年10月26日 19時) (レス) id: d59fc0899f (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - ?かなかなさん» 名前の読み方は「みお」です!美門はもう誰が見てもかっこいいので私もすごく好きです笑 (2021年10月24日 11時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
?かなかな - 凄い!見てみたら、お話増えていたし、澪さんから、お返事きてた!ちなみにこの『澪』って、どう読むんですか?「みお」とかですかね?それにしても、澪さんも美門君好きですかぁ〜。やっぱり人気な方ですね。美門君。私は、どっちかというと美門君の考え方に憧れてる? (2021年10月24日 10時) (レス) @page41 id: d59fc0899f (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - 環さん» たまちゃんありがとう!今回は恋愛の絡みいっぱいにしてみました!喜んでもらえて嬉しいです! (2021年10月23日 12時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 澪ちゃんんんんん!最高、神レベルの最高!!!!!きゅんきゅんだよお!!最近いっぱい更新してくれてありがとう!!楽しみにしてますっ!!!!! (2021年10月23日 10時) (レス) @page41 id: 940f9d3174 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2021年7月6日 22時