第62話『便法』 ページ37
杏奈side
「帰る時、若武連れてって。そっちの隅にいる小っちゃい奴。お茶入れるの手伝いたいって言ってるからさ」
若武くんは、ギョッとしたようだったけれど、骸骨は気にする様子もなく、持ってきた5台のキーボードを机に置くと、若武くんを振り返り、その襟首を掴んでグイッと吊り上げ、部屋を出ていった。
「ね、使うパソコンの順番に並ばない?」
美門くんが提案し、小塚くんが私と彩ちゃんを見る。
「アーヤと神崎は、誰と組むの?」
私は彩ちゃんに目を向ける。
「私はどっちでもいいから、彩ちゃんが決めていいよ」
すると、彩ちゃんはちょっと考えてから答えた。
「私にプログラミング言語のテキストを貸してくれた黒木くんと組みたい」
黒木くんは姿勢を正し、片手を胸に当てて優雅に一礼した。
「ご指名いただき光栄です、姫」
美門くんが私の方に向き直る。
「じゃあ、神崎は俺とだね」
「なんかいつもの感じだね」
美門くんは、目の中の光をユラっと揺らした。
「俺じゃ不満?」
私は首を横に振り、ニコッと笑った。
「最っ高」
その時、七鬼くんの鋭い声が上がる。
「来たぜ、文字列」
私たちはディスプレイを見た。
ものすごい数のプログラミング言語が浮かび上がり、画面を埋め尽くしている。
上杉くんが号令を飛ばした。
「さぁスタートだ、読めっ!」
美門くんがパソコンに飛びつき、スクロールする。
ところが、いくら画面をめくっても、めくっても、まためくっても、またまためくっても文字列は終わっておらず、まるで永久に続いているかのようだった。
「全部で、どんだけあるんでしょ?」
美門くんに聞かれ、上杉くんが自分のディスプレイの端の方にちらっと視線を流す。
「たぶん、5万行くらい」
うわっ・・・まじ?
「まともにやってたら、時間がかかりすぎるな」
黒木君が、まいったといったように両手で髪をかきあげ、天井を仰ぐ。
綺麗な指の間から、クセのない髪がサラサラとこぼれ落ちた。
「二手に分かれよう。正攻法でいくチームと、便法でいくチームだ」
小塚くんが彩ちゃんを見る。
「正攻法はわかるけれど、便法って何?」
彩ちゃんは、ちょっと躊躇いながら答えた。
「便法っていうのは、その場の都合だけを考えて取る便利な方法のこと。その場しのぎってニュアンスもあるかな」
彩ちゃんは、黒木くんに目を向ける。
「黒木君、何を考えてるの?」
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?かなかな - よろしくお願いします!澪さん!美門くんは誰がみてもかっこいい(笑)確かにかも😊外見だけじゃなくて、中身もいいもん!美門くんはまわりに気を配ったりもしてるからさらにね。なんか、あったことあるみたいになってる(笑) (2021年10月26日 19時) (レス) id: d59fc0899f (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - ?かなかなさん» 名前の読み方は「みお」です!美門はもう誰が見てもかっこいいので私もすごく好きです笑 (2021年10月24日 11時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
?かなかな - 凄い!見てみたら、お話増えていたし、澪さんから、お返事きてた!ちなみにこの『澪』って、どう読むんですか?「みお」とかですかね?それにしても、澪さんも美門君好きですかぁ〜。やっぱり人気な方ですね。美門君。私は、どっちかというと美門君の考え方に憧れてる? (2021年10月24日 10時) (レス) @page41 id: d59fc0899f (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - 環さん» たまちゃんありがとう!今回は恋愛の絡みいっぱいにしてみました!喜んでもらえて嬉しいです! (2021年10月23日 12時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 澪ちゃんんんんん!最高、神レベルの最高!!!!!きゅんきゅんだよお!!最近いっぱい更新してくれてありがとう!!楽しみにしてますっ!!!!! (2021年10月23日 10時) (レス) @page41 id: 940f9d3174 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2021年7月6日 22時