第24話『暫定』 ページ49
杏奈side
「最後の事件を解決し、KZの名前を世の中に知らしめるために、一時的にKZの活動を開始する。解散は、その後だ」
再結成とまではいかなかったけど、何とか一安心だ。
「一時的って言葉、ダサいぜ」
そう言いながら、上杉くんが彩ちゃんを見る。
「もっと他にない?」
彩ちゃんはちょっと考えてから答えた。
「それと意味が同じ言葉だったら、臨時とか、暫定的とか、かな。」
若武くんが頷く。
「よし、暫定KZに決定だ」
その時、ノックの音がした。
「お待たせしました」
島崎さんが、揚げたてのドーナツを山盛りにしたお皿を持って入ってくる。
「今日は、チョコドーナツです」
美味しそう!でも、今ダイエット中なんだよね。
若武くんは、かぷっとドーナッツを食いちぎり、短くして口にくわえると、雀の前に差し出した。
「ほら、食えよ」
雀は肩に飛び乗り、そこから体を斜めに伸ばしてドーナツの端に食い付く。
「若武、」
小塚くんが悲しげに眉をひそめる。
「少しずつ遠ざけていかないと、ダメだよ。別れる準備をしないと」
若武くんは息を呑んだ。
「そっか。そうだよな、別れなくっちゃならないんだから」
なんて辛い光景なんだ。
私はドーナツを片手に、その様子を見つめる。
「島崎さん、」
若武くんは、ドーナツを自分のソーサーの上に置き、その隣に雀をのせて島崎さんに渡した。
「ゲージに戻しといて」
ドーナツをついばもうとしていたスズメは、ふと顔を上げ、若武くんの方を見る。
そばに寄ろうとして、ホップしかけた時にはらもう島崎さんがソーサーを持ち上げていた。
スズメはソーサーからこぼれ落ちそうになり、慌てて中に戻ると、チッチと鳴いて若武くんのそばに行きたいとアピールする。
若武君はわざと怖い顔を作った。
「だめ、ケージに戻るんだ」
雀はピタッと動きを止め、途方に暮れたように若武くんを見つめる。
島崎さんが出ていき、パタンとドアが閉まる。
シーンとする部屋の中で黒木くんが立ち上がり、自分のカップを空中に差しあげた。
「悲しみを殺してジュニアを巣立ちさせ、暫定KZを立ち上げて最後の事件に挑もうとする我らがリーダー、若武に乾杯」
それで全員が立ち上がってカップを掲げた。
「リーダー若武に、乾杯っ!」
若武君は気を取り直し、立ち上がって私たちを見回した。
「では諸君、暫定KZの会議を始める。議題は、KZ最後の事件だ。まぁ座ってくれ」
ところで、最後の事件ってなんだろう?
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じゃんけんぽんのあいこでしょ - (付け足し)今は黄金の雨は知っているまでしか持っていないけど、もう妖怪パソコンは知っているまで読みました。面白すぎます!! (2021年12月11日 7時) (レス) @page25 id: 332cd5a7b6 (このIDを非表示/違反報告)
じゃんけんぽんのあいこでしょ - 面白くて本を買っていないところまで読んでしまいます。オチ美門君がいいと思ってます! (2021年12月11日 7時) (レス) @page17 id: 332cd5a7b6 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃこ - すごく面白いです!オチは翼がいいです (2021年7月10日 12時) (レス) id: 3464283e0f (このIDを非表示/違反報告)
Snow(プロフ) - いつも楽しみにしています!オチは翼がいいです (2021年6月25日 7時) (レス) id: 1bc28cf27b (このIDを非表示/違反報告)
美麗 - いつもありがとう!オチは、翼がいいです。 (2021年6月11日 23時) (レス) id: bde687998f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2021年3月17日 23時