第21話『よいしょ』 ページ46
杏奈side
お昼ご飯を食べてから、私は若武くんの家に向かった。
黒木くんに若武くんの家の地図を送ってもらったけど、方向音痴な私は、迷いながら集合時間を少し過ぎて家に着いた。
少し緊張しながらインターホンを押すと、女の人が出た。
確かこの人は、よく話に聞くお手伝いさんの島崎さんだ。
「あの、私、若武くんの友人の神崎と申します。黒木くんたちってここに来ていますか?」
島崎さんは私の前にスリッパを出しながら、「いらっしゃっていますよ」と言う。
私はスリッパを履き、島崎さんに案内されるがままに部屋に案内された。
ノックをしてドアを開けると、そこは書斎だった。
私以外の人はもうみんな来ていて、私はちょっと慌てる。
「遅くなってごめんね!迷っちゃって・・・!」
黒木くんが微笑む。
「大丈夫だよ。さ、座って」
黒木くんに促され、私はソファに腰を下ろす。
ちらっと若武くんに目をやると、あからさまに不機嫌だった。
「・・・若武くん、お邪魔します」
「神崎まで来るなんて、聞いてない。何なんだよ、おまえら」
睨まれてしまい、私は眉を下げる。
こわ。
「今日はさ、」
上杉くんが話を切り出す。
「おまえが卵抱いて孵したって聞いたから、その祝いに来たんだ。もうベビーの名前も決めてある。若武ジュニアだ」
続いて黒木くんが言う。
「俺も、お祝いに来ただけ」
白々しい。
「途中で、皆と会ったから一緒に来たんだ。まぁ偶然だね」
小塚くんは、気が咎めるといったように目を伏せる。
「皆に、若武が卵を抱いてることを話したのは、KZが解散する前だったんだ。孵化させたって話をしたのも、まだKZが存在してた時だよ。今日は、その後の最初の土曜日だからさ」
その話を受けて彩ちゃんが口を開く。
「私たちって、昼間の時間は土曜日しか空いてないんだもの。お祝いに来る日が搗ち合っても、しかたないでしょ」
そして、最後に私が言う。
「みんな、若武くんが孵らせた雀を見に来たの。ねぇ、雀を見せて。優しくてかっこいい若武くんが育てた雀、見たいな〜」
若武くんの機嫌を取るために、しっかりと言葉を選ぶ。
若武くんは睨むのをやめたが、まだ少し不貞腐れていた。
「見たら即、帰れよ」
荒々しくドアを開け、その向こうに姿を消す。
144人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「探偵チームKZ事件ノート」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
じゃんけんぽんのあいこでしょ - (付け足し)今は黄金の雨は知っているまでしか持っていないけど、もう妖怪パソコンは知っているまで読みました。面白すぎます!! (2021年12月11日 7時) (レス) @page25 id: 332cd5a7b6 (このIDを非表示/違反報告)
じゃんけんぽんのあいこでしょ - 面白くて本を買っていないところまで読んでしまいます。オチ美門君がいいと思ってます! (2021年12月11日 7時) (レス) @page17 id: 332cd5a7b6 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃこ - すごく面白いです!オチは翼がいいです (2021年7月10日 12時) (レス) id: 3464283e0f (このIDを非表示/違反報告)
Snow(プロフ) - いつも楽しみにしています!オチは翼がいいです (2021年6月25日 7時) (レス) id: 1bc28cf27b (このIDを非表示/違反報告)
美麗 - いつもありがとう!オチは、翼がいいです。 (2021年6月11日 23時) (レス) id: bde687998f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:澪 | 作成日時:2021年3月17日 23時