第10話『ポジティブシンキング』 ページ35
杏奈side
それは、私と美門くんが、今1番気にしている事だった。
まあ、美門くんは頭が良くて特出したものが無いだけで、私は勉強自体苦手なんだけどね。
「じゃ翼、小塚の範囲が広いから手分けしてやってよ。神崎はアーヤの手伝い。アーヤと一緒の方がやりやすいと思うし」
若武くんが全員に役目を振り当てると、上杉くんが両手を合わせ、周りの迷惑にならないように音を抑えた拍手をした。
「受験アプリというのは、実に名案だ。さすがリーダー」
上杉くんの薄い唇に、うっすらとした笑みが浮かんだ。
「だが遅かったな。そのアプリは、すでに大手から発売されてる」
若武くんは、瞬時に顔を硬直させた。
「ほんとかっ!?」
上杉くんは体を傾け、床に置いてあったバッグからノートパソコンを出した。
「今のところ大学受験がメインだけど、時間の問題で中学受験にも手を広げてくるだろう」
そう言いながらパソコンを立ち上げ、そのページを呼び出す。
「ん、重いな」
動かない画面を見て呟く上杉くんに、黒木くんがからかうような笑みを向けた。
「そいつも、姫って呼んだら?」
私は、さっきの話を思い出してまた少し笑ってしまう。
「ああ、やっと出た」
それは、受験サプリという題のついたサイトだった。
説明を見れば、様々な学校や予備校の講師が授業を担当しており、中には受験界のカリスマと呼ばれている有名講師もいた。
講座だけでなくテストもあり、その答案の分析から苦手な部分を突き止め、何を補えばいいのかの指示も出るようになっている。
受験情報は、大手の塾や、名門の受験雑誌の出版社が提供していた
「この充実ぶりに、俺たち、太刀打ちできるか?」
無理だねぇ。
「ちっきしょう!絶対、儲かると思ってたのにぃ!!」
若武くんは頭を抱えたまま、片手でドンドンとテーブルを叩く。
「俺たちのライバルは、大手企業かっ!だが日本有数の会社と、同じ発想をできた俺は偉いっ!!」
私たちは思わず顔を見合わせて、クスクス笑った。
いつでも絶対に暗くならないのが、若武くんのいいところだ。
「若武先生、落ち着いて」
黒木くんが静かに口を開く。
「俺達には、素晴らしい友人がいるじゃないか。アプリ会社を立ち上げた砂原だ。あいつに連絡して、今、配信したいアプリについて聞いてみたらどう?で、それを俺たちに作らせてもらうんだ」
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じゃんけんぽんのあいこでしょ - (付け足し)今は黄金の雨は知っているまでしか持っていないけど、もう妖怪パソコンは知っているまで読みました。面白すぎます!! (2021年12月11日 7時) (レス) @page25 id: 332cd5a7b6 (このIDを非表示/違反報告)
じゃんけんぽんのあいこでしょ - 面白くて本を買っていないところまで読んでしまいます。オチ美門君がいいと思ってます! (2021年12月11日 7時) (レス) @page17 id: 332cd5a7b6 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃこ - すごく面白いです!オチは翼がいいです (2021年7月10日 12時) (レス) id: 3464283e0f (このIDを非表示/違反報告)
Snow(プロフ) - いつも楽しみにしています!オチは翼がいいです (2021年6月25日 7時) (レス) id: 1bc28cf27b (このIDを非表示/違反報告)
美麗 - いつもありがとう!オチは、翼がいいです。 (2021年6月11日 23時) (レス) id: bde687998f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2021年3月17日 23時