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第65話『目を覚ました』 ページ21

杏奈side


私と上杉くんが眠っている美麗ちゃんを見つめていると、誰かが病室に近づいてくる足音がする。

足音からして、子供。人数は5人。

若武くんたちだ。

「俺達も来たぜ」

私の予想は的中し、若武くんたちが病室に姿を見せた。

「事件は?」

上杉くんが聞くと、美門くんが片目をつぶった。

「完璧解決。事故ってことで東条も納得した。後で、おまえに謝るって」

上杉くんは苦笑する。

「別に、いらねーし」

黒木くんが、優しい目を上杉くんに向けた。

「上杉、なんだかスッキリした顔してるな。神崎と何か話したのか?」

上杉くんは一瞬私を見てから、また視線をベッドに戻した。

「まあ、な」

曖昧な答えに、黒木くんは肩をすくめた。

若武くんたちはベッドを取り囲み、眠っている美麗ちゃんを見る。

「いつまで寝てんだろうな」

「さぁ」

「そのうち飽きて、起きるんじゃない?」

「そうなるといいけどね」

「人生が楽しいってことを、皆で目いっぱいアピールしてみるのは、どうかな」

「それより上杉が、好きだよってひと言言えばいいだけじゃない?」

「それ、いいかも」

「おい、俺の気持ちは?」

「無視っ!」

声を潜めて話していると、ノックの音が響き、看護師さんが点滴のバッグを持って姿を見せた。

「ああ君たち、ちょっと外に出ててね」

私たちはベッドのそばから離れ、ぞろぞろとドアに向かう。

部屋の空気が大きく動いた。

その時、

「あらっ!」

看護師さんの声が響く。

「目を開けたっ!先生に連絡しなくちゃ!!」

慌てて出ていく看護師さんとすれ違うように、私たちはベッドに駆け寄った。

美麗ちゃんは、ぼんやりとした目で、あたりを見回している。

「上杉、ほらっ!」

美門くんが上杉くんの二の腕を掴み、枕元に引き寄せた。

「北原美麗さん、わかりますか?上杉和典ですよ」

大きな声でそう言うと、美麗ちゃんは上杉くんの方に目を向け、じっと見つめた。

その目から、たちまち涙がこぼれ落ちる。

「ごめんなさい、ごめんなさい」

上杉くんは、そばにあった椅子を引き寄せながら私たちを振り返った。

「外、出ててくれ」

言われた通り、私たちは病室を出る。

でも、このまま大人しく引き下がるような人は、KZには一人もいなかった。

ほんのわずかだけドアを開け、そこに目を押し付けて中の様子を覗き見る。

第66話『親指』→←第64話『話し合えばいい』



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じゃんけんぽんのあいこでしょ - (付け足し)今は黄金の雨は知っているまでしか持っていないけど、もう妖怪パソコンは知っているまで読みました。面白すぎます!! (2021年12月11日 7時) (レス) @page25 id: 332cd5a7b6 (このIDを非表示/違反報告)
じゃんけんぽんのあいこでしょ - 面白くて本を買っていないところまで読んでしまいます。オチ美門君がいいと思ってます! (2021年12月11日 7時) (レス) @page17 id: 332cd5a7b6 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃこ - すごく面白いです!オチは翼がいいです (2021年7月10日 12時) (レス) id: 3464283e0f (このIDを非表示/違反報告)
Snow(プロフ) - いつも楽しみにしています!オチは翼がいいです (2021年6月25日 7時) (レス) id: 1bc28cf27b (このIDを非表示/違反報告)
美麗 - いつもありがとう!オチは、翼がいいです。 (2021年6月11日 23時) (レス) id: bde687998f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年3月17日 23時

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