第62話『見張り』 ページ18
杏奈side
黒木くんが艶やかな目を私に向ける。
「そうだな。神崎なら、あいつも怒らないだろ」
いや、怒るでしょ。
私は反論しようとしたけど、リーダー命令により、車の中に戻された。
調査に参加したかったけど、これも大事な任務だと思い、私は上杉くんの隣の席に腰かけた。
上杉くんは、一瞬私を見ただけで、特に何も言わなかった。
会話もなく、二人の間に沈黙が広がる。
これは、何か話した方がいいのかな。
そう思い、私は重い空気の中口を開いた。
「上杉くんって、大人っぽく見えるけど、実は結構子供っぽいよね」
いきなり何だというように、上杉くんは不信げな目を私に向けた。
「悪口だろ」
「ううん。褒め言葉」
「嘘だろ」
「嘘だよ」
私はクスッと笑う。
「でも、悪口でもないよ。ただ、本当に思ったことを言っただけ」
私と上杉くんは、顔を見合わせて笑う。
上杉くんの瞳の奥にある緊張の光が、ふっと和らいだ気がした。
「神崎さぁ、」
上杉くんが椅子の背にもたれかかりながら言う。
「なんで俺に構おうとしてくるんだ?」
その声は、どこか弱々しかった。
「俺、今回のことでお前のこと傷つけてばっかだろ。ここまで冷たくされたら、もっと拒絶するとか、怒るとか、あるだろ」
私は首を傾げる。
「怒られたいの?」
すると、上杉くんはムッとしたような顔になった。
「そういうことを言ってるんじゃねーよ」
じゃあ、どうしてそんなこと言うんだろう。
それに私、前に一度、上杉くんに「怒ってる」って言ったじゃない。それだけで十分でしょ。
「私は、上杉くんに冷たくされたことは別に気にしてないよ。誰だって、人と関わりたくない時とか、踏み込んできて欲しくないことってあるからね。それに無理やり踏み荒らそうとしてる私達も悪い気がするし」
踏み荒すなんて言い方したら、若武くんに怒られるかな。
そんなことを思うと、自然と笑みがこぼれた。
上杉くんは、瞳の奥に悲しげな光を煌めかせる。
「隠したいことがあるなら、それでもいいよ。だけど私は、その事で上杉くんが悩んで苦しんでるなら、助けたいって思ったの。今回のことは、きっと上杉くんは悪くないはずだから。私は、それを証明したいだけ」
私がキッパリそう言うと、上杉くんは目を伏せた。
「・・・俺にも、悪いところはあったんだ」
「え・・・?」
上杉くんは立ち上がる。
「行きたいところがある。来たかったら、来ていいよ」
行きたいところ・・・?
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じゃんけんぽんのあいこでしょ - (付け足し)今は黄金の雨は知っているまでしか持っていないけど、もう妖怪パソコンは知っているまで読みました。面白すぎます!! (2021年12月11日 7時) (レス) @page25 id: 332cd5a7b6 (このIDを非表示/違反報告)
じゃんけんぽんのあいこでしょ - 面白くて本を買っていないところまで読んでしまいます。オチ美門君がいいと思ってます! (2021年12月11日 7時) (レス) @page17 id: 332cd5a7b6 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃこ - すごく面白いです!オチは翼がいいです (2021年7月10日 12時) (レス) id: 3464283e0f (このIDを非表示/違反報告)
Snow(プロフ) - いつも楽しみにしています!オチは翼がいいです (2021年6月25日 7時) (レス) id: 1bc28cf27b (このIDを非表示/違反報告)
美麗 - いつもありがとう!オチは、翼がいいです。 (2021年6月11日 23時) (レス) id: bde687998f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2021年3月17日 23時