第26話『色紙』 ページ9
杏奈side
就任祝いを何にするかはそれぞれ考えることになって、その日はそれで解散した。
私はまだ正式なメンバーじゃないし、提案は遠慮させてもらった。
土曜日の2日前くらいに、小塚くんから連絡があって、贈り物は寄せ書きにすることになったと。
彩ちゃんの案らしくて、彩ちゃんらしくてとっても素敵だと思った。
そして土曜日。
私たちは駅のスターバックスで待ち合わせた。
若武くんは私服だったけど、私と彩ちゃんは浜田の制服、上杉くんたち開生組3人は、詰め襟の制服でやってきた。
みんなが揃う頃、美門くんが私服で姿を見せたんだけど、やけにニコニコしていて、私たちを見回すとマクスを取って顔を見せた。
「今日、歯医者行ってきたんだ」
折られた前歯が全部、元通りになっていた。
内出血もほとんど引いてきたし、もう少しで全部戻りそう。
よかった。
私の顔の怪我も、もうほとんど薄らで、遠目からだと見えない状態だった。
「これ、色紙だよ」
小塚くんが丸い色紙を出す。
「いろんなことが丸く収まるようにって思って、これにしたんだ」
まず、若武くんが中央に探偵チームKZと書いて、その下に自分の考えてきたメッセージを入れた。
それで、個人個人が好きな場所にお祝いのメッセージを書くことになったんだけど、彩ちゃんや小塚くんがあまりメッセージを見られたくないみたいだった。
それで、若武くんが提案した。
「じゃあ書く順番を決めよう。みんなでジャンケンだ」
みんながテーブルの上に手を出した。
じゃんけんをしようとした時、上杉くんが口を開いた。
「小塚、それ、貸してみ」
上杉くんは色紙の入っていた紙袋を受け取り、そのシワを伸ばし、そこに色紙と同じ大きさの円を描き始める。
「上杉、手出せよ。ジャンケンなんだからさ」
若武くんに急かされても、全く動じない。
円を描き終えると、今度はズボンの後ろポケットから分度器を出して、書いた円の中心を割り出した。
「えっと若武はもう書いてるから、残りは6人。360÷6で、60ね」
中心から円周に向かって60度の角度をとりながら線を引いていき、円を6つの扇形に分ける。
「小塚、ハサミ持ってる?」
小塚くんからハサミを借り、その6分の1を切り取って、クチャっと丸めた。
「よし、オッケ」
残った紙を色紙に被せる。
すると、それは1人分の書く場所だけが見えて、その他は隠れるカバーになっていた。
「自分が書いたら、次の奴に渡す前に、これを動かせば隠れる」
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澪(プロフ) - 紗奈#さん» ありがとうございます! (2020年7月26日 16時) (レス) id: 2b665a7700 (このIDを非表示/違反報告)
紗奈#(プロフ) - 続編嬉しいです!頑張ってください!! (2020年7月26日 11時) (レス) id: 6ea719cde4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2020年7月26日 0時