第64話『興奮気味のKZ』 ページ47
杏奈side
ふと隣を見ると、彩ちゃんが散歩する2人を見て、ポッと赤くなっていた。
彩ちゃん、こういうの憧れるのかな?
可愛い。
「アーヤ、おまえ、顔赤いぜ。大丈夫か」
若武くんがそう言い、みんなが彩ちゃんを見た。
「気分悪かったら、休んでな」
「この辺のデッキチェア、使うといいよ」
みんな、ロマンがわかっていない。
まあ、男の子だし、そんなものか。
「えっと」
夢中で匂いを嗅ぎ分けていた美門くんが、指先をあげる。
「上からだ」
私たちは、近くにあった船内階段を使った。
私たちは美門くんに先導され、ひたすら階段をあがっていき、船の最上階に行き着いた。
「ここ、ペントハウスじゃん」
そこは、これまでのどの階よりも豪華だった。
壁にはシグナルデッキと書かれていて、天井からシャンデリアが下がり、絨毯の模様も細やかで厚く、廊下の両側には大きな船室が並んでいる。
「見ろよ、船の心臓部だ」
若武くんの指は、廊下の突き当たりを指していた。
そこは、海を見下ろす窓を3方に取った、明るい部屋だった。
窓の上には、たくさんのスピーカーや時計がはめ込まれ、窓の下には、様々なコンピュータや製図机が置いてある。
「すげぇ!」
「カッコいいじゃん」
KZメンバーは、使命も忘れて大興奮。
我先にとそこに走り寄った。
「おい、このエンジン、ディーゼルエレクトリックだ。しかも6基。1基1000ボルトで、0.5メガワットだぜ」
「俺、すっかりキャプテン気分っ!」
みんながすっかりはしゃいでいるのを見て、私はため息をこぼす。
私たち、ここに潜入してるのに、よくそんなテンションでいられるな・・・。
これが探偵の慣れってやつなのかな?
「美門が呼んでる。行こう」
しばらくして若武くんがそう言い、私たちは引き返す。
美門くんは、廊下の半ばほどの所でひざまずき、船室のドアの隙間に顔を押し付けていた。
「誰か、メモ取って」
彩ちゃんが急いで秀明バッグを開けて、中からメモを出した。
「俺が、これから中の様子を話すから、内部図を作ってよ」
美門くんが匂いを嗅ぎながら口を開く。
「船室は、入ったところがリビング、右手にクローゼット、左手に6段の階段。これを上った2階部分に寝室、バス・トイレ、サンルーム、そしてルーフバルコニー型の専用デッキだ」
私たちは彩ちゃんの手元を覗き込む。
「1階の寝室の壁には、テレビが埋め込まれている。その隣に飾り棚があって、その下が隠し金庫だ」
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澪(プロフ) - 紗奈#さん» ありがとうございます! (2020年7月26日 16時) (レス) id: 2b665a7700 (このIDを非表示/違反報告)
紗奈#(プロフ) - 続編嬉しいです!頑張ってください!! (2020年7月26日 11時) (レス) id: 6ea719cde4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2020年7月26日 0時