第44話『約束』 ページ27
杏奈side
「しょうがね。じゃ俺達も出動だ」
キッパリと言って若武くんが立ち上がる。
「早急にサトケンを捕まえるぞ。黒木が北側やるって言ってたから、上杉はその補佐。美門と俺は、南側をやる。行こうぜっ!」
その日はそれで解散した。
私は家に帰り、ずっと翔のことを考えていた。
翔とは、親友と呼べるほど仲が良かった。
考え方や思考が似ていたからか、なぜだか相性が良くて、一緒にいて楽だった。
今の美門くんと同じか、それ以上に。
だから転校する時はすごく寂しかったし、初めて転校したくないって思った。
でも、そんなことを口にせず、あっさりとバイバイした。
そういえば、お別れの日に翔から貰ったものがある。
私は机の引き出しを開けて、その中から白い長方形の箱を取り出す。
その箱の中には、雪の結晶がモチーフになったシルバーのネックレスが入っている。
真ん中にはサファイアが付いていて、おそらく結構いいお値段がするものだ。
なにか特別なことがある日は、お守りみたいにつけていた。
それ以外の日は、あまりつけていない。
無くしたり、壊したりしたら嫌だから。
私はネックレスを手のひらに乗せて、雪の結晶にそっと口付ける。
刹那、私の携帯が鳴り、画面には『砂原翔』の文字が出ていた。
私が携帯を持ち始めたのは小5からだ。
だから翔には携帯番号を教えていないはず。
どうして知っているのか。
私は少し驚きながらも、電話に出る。
「もしもし」
緊張で、少し声が固くなる。
「もしもし。いきなりかけて悪いな」
それは紛れもなく、翔の声だった。
「番号は上杉から聞いたんだ」
そうなんだ。
「今度の日曜さ、ちょっと話したいんだけど、会えるか?」
「何か用事?それなら別に今言ってもいいよ。翔、忙しいし、無理に会わなくても」
私がそう言うと、電話越しに翔のクスっという笑い声が聞こえる。
「用事は特にないよ。ただ、神崎に会いたいんだ」
ドキッ。
いきなりそんなことを言うものだから、私は体温が一気に上昇し、恥ずかしくてなんて答えたらいいのかわからなくなる。
翔って、こんなこと言う子だったっけ。
落ち着いて、平然を装わないと。
「嬉しい!私も翔に会いたいな〜。全然OKだよ」
明るくそう答えると、翔はまたクスッと笑った。
「じゃあ、日曜日に駅前まで来れるか?」
それで、私たちは日曜日のお昼に駅前で待ち合わせをして、近くのお店で食事をとりながら話すことになった。
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澪(プロフ) - 紗奈#さん» ありがとうございます! (2020年7月26日 16時) (レス) id: 2b665a7700 (このIDを非表示/違反報告)
紗奈#(プロフ) - 続編嬉しいです!頑張ってください!! (2020年7月26日 11時) (レス) id: 6ea719cde4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2020年7月26日 0時