第40話『雇う』 ページ23
杏奈side
いつも自分のことよりも、誰かのことを考えて行動している。
「いやぁ、俺、おまえの話に感動した」
若武くんがそう言った。
「おまえは、ほんっとに見上げた奴だ。人間として優れてる。KZのメンバーにしたいくらいだ」
彩ちゃんが頷いた。
みんな、同じように思ったに違いない。
「で、そんな砂原に、俺、頼みがあるんだけどさ。俺たちKZを雇ってくんない?」
あ、そういう話の切り出し方なんだ。
「俺たち、実力はあるのに、てんで認められなくてさ。それでお前の会社に、雇ってもらいたいと思ってんの。KZの名前を世の中に広めたいんだ。俺たちを雇う金くらいあるだろ」
翔は、いたずらっぽい笑顔になった。
「雇ったら、何してくれんの」
上杉くんが、サラッと答える。
「若武が、お前の靴、磨いてくれるらしいよ」
私たちはみんな、プッと噴き出した。
若武くんを除いて、ね。
「おもしれ」
翔も笑う。
「いいよ。今ちょっとバタバタしてるから、これが落ち着いたら、雇う手続きをするよ」
いいの!?
「出資者のシュン・サクライ氏が、今ちょうど日本に来ててさ」
え、そうなの。
「もうすぐ帰ると思うけど、それまでは毎日、呼び出されてミーティングなんだ。シュンは、俺の会社の出資者で、日本の身元引受人を見つけてくれた人でもあるし、サトケンが中学に通うための手続きをしたりしてくれてるからさ、頭あがんないわけ」
KZの今回の事件は『美門&神崎襲撃リベンジ赤い仮面事件』だ。
私たちを襲った犯人を見つけてリベンジして、かつ国際的犯罪組織である赤い仮面団の正体を暴いて、賞金を手に入れ、KZの名前を世界中に知らしめるというのが目的。
初めは、翔からシュン・サクライさんを紹介してもらって、赤い仮面団に迫ることになっていた。
きっとシュン・サクライさんは日本にはいないだろうから、電話かメールで、って考えていた。
それが日本に来ているのはチャンスという他ない。
若武くんがすぐさまそのチャンスをつかみ寄せた。
「あ、雇ってくれるんなら、シュン・サクライの会社でもいいぜ。むしろ、そっちの方がグローバルかな。シュン・サクライは、子供の活動に理解があるって聞いてるから、きっといい返事をくれるだろ。紹介してくれよ」
瞬間、翔のふたつの瞳が、一気に縮み上がった。
その奥で、警戒するような鋭い光がきらめく。
私は息を呑んだ。
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澪(プロフ) - 紗奈#さん» ありがとうございます! (2020年7月26日 16時) (レス) id: 2b665a7700 (このIDを非表示/違反報告)
紗奈#(プロフ) - 続編嬉しいです!頑張ってください!! (2020年7月26日 11時) (レス) id: 6ea719cde4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2020年7月26日 0時