検索窓
今日:2 hit、昨日:63 hit、合計:153,647 hit

第40話『雇う』 ページ23

杏奈side


いつも自分のことよりも、誰かのことを考えて行動している。

「いやぁ、俺、おまえの話に感動した」

若武くんがそう言った。

「おまえは、ほんっとに見上げた奴だ。人間として優れてる。KZのメンバーにしたいくらいだ」

彩ちゃんが頷いた。

みんな、同じように思ったに違いない。

「で、そんな砂原に、俺、頼みがあるんだけどさ。俺たちKZを雇ってくんない?」

あ、そういう話の切り出し方なんだ。

「俺たち、実力はあるのに、てんで認められなくてさ。それでお前の会社に、雇ってもらいたいと思ってんの。KZの名前を世の中に広めたいんだ。俺たちを雇う金くらいあるだろ」

翔は、いたずらっぽい笑顔になった。

「雇ったら、何してくれんの」

上杉くんが、サラッと答える。

「若武が、お前の靴、磨いてくれるらしいよ」

私たちはみんな、プッと噴き出した。

若武くんを除いて、ね。

「おもしれ」

翔も笑う。

「いいよ。今ちょっとバタバタしてるから、これが落ち着いたら、雇う手続きをするよ」

いいの!?

「出資者のシュン・サクライ氏が、今ちょうど日本に来ててさ」

え、そうなの。

「もうすぐ帰ると思うけど、それまでは毎日、呼び出されてミーティングなんだ。シュンは、俺の会社の出資者で、日本の身元引受人を見つけてくれた人でもあるし、サトケンが中学に通うための手続きをしたりしてくれてるからさ、頭あがんないわけ」

KZの今回の事件は『美門&神崎襲撃リベンジ赤い仮面事件』だ。

私たちを襲った犯人を見つけてリベンジして、かつ国際的犯罪組織である赤い仮面団の正体を暴いて、賞金を手に入れ、KZの名前を世界中に知らしめるというのが目的。

初めは、翔からシュン・サクライさんを紹介してもらって、赤い仮面団に迫ることになっていた。

きっとシュン・サクライさんは日本にはいないだろうから、電話かメールで、って考えていた。

それが日本に来ているのはチャンスという他ない。

若武くんがすぐさまそのチャンスをつかみ寄せた。

「あ、雇ってくれるんなら、シュン・サクライの会社でもいいぜ。むしろ、そっちの方がグローバルかな。シュン・サクライは、子供の活動に理解があるって聞いてるから、きっといい返事をくれるだろ。紹介してくれよ」

瞬間、翔のふたつの瞳が、一気に縮み上がった。

その奥で、警戒するような鋭い光がきらめく。

私は息を呑んだ。

第41話『掴んだ服』→←第39話『サトケンの事情』



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (85 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
128人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - 紗奈#さん» ありがとうございます! (2020年7月26日 16時) (レス) id: 2b665a7700 (このIDを非表示/違反報告)
紗奈#(プロフ) - 続編嬉しいです!頑張ってください!! (2020年7月26日 11時) (レス) id: 6ea719cde4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2020年7月26日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。