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第38話『自己責任』 ページ21

杏奈side


「お祝い、ここで渡せばよくない?」

彩ちゃんが提案すると、若武くんは首を横に振った。

「ここじゃ贈呈式ができないじゃん」

贈呈式なんてたいそうなものだったんだ。

「改めて、会社の方に行くよ」

若武くんの言葉に、翔は頷いだ。

「ん、覚悟して待ってる」

そう言いながらニヤッと笑う。

「気持ちを落ち着けないと、俺、泣きそうだからさ、うれしくて」

翔はそう言ってから、私に目を向ける。

「神崎、ほんとに久しぶりだな。いつこっちに戻ってきたんだ?」

「まだ全然そんなにたってないよ。ついこないだ戻ってきたばっかり」

私がそう答えると、翔はKZのみんなにちらっと目を向ける。

「おまえも、KZに入ったのか?」

私は首を横に振る。

「今はまだ体験入団。正式メンバーじゃないよ」

「体験ってことは、これから入るかもってことか。浜田の制服着てるってことは、立花と同じか」

私は彩ちゃんの腕に自分の腕を絡めて密着する。

「そうだよ。しかも同じクラスで、友達なの!」

私の言葉に、彩ちゃんは照れたような、でも嬉しそうに笑った。

その様子を見て、翔はふっと目元をやわらげた。

「神崎なら、絶対立花と仲良くなれると思った。」

彩ちゃんは翔の笑顔に、少しだけ頬を赤く染めて俯いた。

彩ちゃん、可愛い。

2人は相思相愛なのかな?

付き合ってるって訳ではなさそう?

でもなんか、お互いすごい好きオーラが溢れてるような。

聞きたいけど、こういうのってあんまりグイグイ聞きすぎたらウザイだろうしなぁ。

私がそんなことを思っていると、上杉くんの声が飛んでくる。

「砂原さぁ、俺、1つ忠告するけど」

上杉くんが心配そうな表情になる。

「おまえ、さっき交番で、今後は自分が責任を持つみたいなこと言ってただろ。はっきり言って、それって甘いぜ。もっと厳しくしないとダメだ。自己責任って言葉を教えてやれよ」

翔は、ふっと遠くを見るような目つきをした。

「サトケンは、社会からドロップアウトした奴でさ。親父は建設会社の社長で、俺の親と親しかったんだ」

翔はサトケンさんの話を始めた。

翔の所と同じで羽振りのいい会社だったが、倒産して、サトケンさんの父親は自ら命を絶ったらしい。

「それで引っ越して学校に来なくなって、ずっと会わなかったんだ。再会したのは去年だよ。コンビニで万引きしてる奴らを見つけて、追いかけて、駐車場で取っ組み合いになってさ、よく見たらその中の1人がサトケンだった」

第39話『サトケンの事情』→←第37話『誤解』



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(プロフ) - 紗奈#さん» ありがとうございます! (2020年7月26日 16時) (レス) id: 2b665a7700 (このIDを非表示/違反報告)
紗奈#(プロフ) - 続編嬉しいです!頑張ってください!! (2020年7月26日 11時) (レス) id: 6ea719cde4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年7月26日 0時

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