第34話『ごめんなさい』 ページ17
杏奈side
美門くんが呟く。
「わかりました。俺の怪我はもう治ったんで、今後、俺みたいな人間を出さないって約束してくれるんなら、それでいいです。でも、」
美門くんはそこで言葉を切ると、私に目を向けた。
その瞳には、辛そうな、悔しそうな光があった。
「神崎には、もう一度ちゃんと謝ってください。女子なのに顔に何日も青アザ作って過ごしてたんです。腹部だって蹴られて、まだ青アザが残ってるから痛みがあります。男だけならまだしも、女子にこんなことして、あんな謝罪だけで済まされるのは納得いきません」
翔が私に目を向ける。
思いっきり目が合い、反射的に目を逸らしてしまう。
「神崎って、もしかしてあの神崎か?」
翔の少し驚いたような声が響く。
私は再び翔に目を向け、ゆっくりと頷いた。
「久しぶりだね、翔」
私がそう言うと、翔は懐かしそうな目で私を見つめる。
その表情は、嬉しそうだけど、どこか悲しそうだった。
翔が不良3人組に目を向けると、3人は私に頭を下げて謝る。
私はどんな反応をしていいのかわからず、そばにいた黒木くんの服の裾を掴んだ。
すると黒木くんは、私の手をぎゅっと握ってくれる。
それで、少し落ち着いた。
「もう大丈夫です。私の怪我は大したことないですから。でもごめんなさい。私は、あなたたちのことを許すつもりはありません」
私がそう言うと、黒木くんがクスッと笑う。
「美門くんは私のことを女の子だからって気にかけてくれているけど、私よりもボコボコにされた美門くんの方が、私は心配です。大切な友達を傷つけられて、簡単に許すことはできません。一生、絶対、許しません」
翔は甘い目を私に向ける。
「変わらないな、神崎」
久しぶりに会えた翔。
私はなんだか泣いてしまいそうだった。
「こんなところで会いたくなかったよ、翔」
少し声が震えた。
みんなは驚いた顔で私を見る。
私は涙を必死にこらえる。
ちょっとでも気を抜いたら、今すぐ瞳から涙が零れ落ちそうだった。
翔はゆっくりと私に近づいてきて、私の前まで来ると、頭に手を乗せて、優しく撫でてくれた。
それで、私はとうとう泣いてしまった。
「泣かせないでよ。私の友達に、女の子の涙が苦手な人がいるんだから」
泣き笑いながらそう言うと、上杉くんが少し肩を揺らす。
その様子を見て、彩ちゃんと小塚くんはクスクス笑う。
翔は私から手を離すと、美門くんに目を向ける。
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澪(プロフ) - 紗奈#さん» ありがとうございます! (2020年7月26日 16時) (レス) id: 2b665a7700 (このIDを非表示/違反報告)
紗奈#(プロフ) - 続編嬉しいです!頑張ってください!! (2020年7月26日 11時) (レス) id: 6ea719cde4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2020年7月26日 0時