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第32話『謝罪』 ページ15

杏奈side


翔も驚いているみたいで、その場に立ち止まった。

「おまえら、か・・・」

上杉くんが皮肉な笑みをもらす。

「こんなとこにいたんじゃ、電話、出られねーはずだよな」

翔はわずかに微笑んだ。

「ん、奥で話してたからさ」

私の知っている砂原翔。

声は少しだけ低くなっているけど、それ以外はあまり変わっていない。

身長が伸びたとか、それくらいの変化だ。

「久しぶりだよな」

そう言いながら私たちを見回し、一番端にいた彩ちゃんの所で視線を止める。

「やぁ立花。会えて嬉しいよ」

翔の瞳は優しくて、私は直ぐに察した。

翔、彩ちゃんのこと好きなんだ。

「元気だった?」

彩ちゃんと翔は見つめ合う。

なんだか甘い雰囲気。

その時、警官の声が響いた。

「被害者は、誰?」

「この子達です」

若武くんが、私と美門くんを指す。

警官は3人を振り返った。

「間違いないか」

全員がバラバラに頷いた。

「じゃ謝んなさい。ほら3人とも、ちゃんと1列に並んで」

3人はおずおずと1列になり、美門くんと私に向かって、なにかモゴモゴと言いながら頭を下げた。

「足りないな」

そういったのは上杉くんだった。

「しっかり謝れよっ!」

急に怒鳴る上杉くんに、私の方がビビってしまう。

正直、この犯人たちより今の上杉くんの方がよっぽど怖い。

若武くんも、3人を睨みまわす。

「おまえら、ほんとに反省してんのかよ」

3人は、あわてて姿勢を正し、さっきよりは大きな声を出した。

「すんませんでした」

それを聞いて、警官が美門くんと私に向き直る。

「ということで、いいかな」

いやなにがいいんだ。

何も良くない。

謝られただけで許せと言うのか。

美門くんは1歩前に踏み出した。

「俺たちが襲われた時のことや、加害者がなぜ自首してきたのかについて、もっと詳しく聞きたいんですが」

警官は困ったように眉根を寄せた。

「被害者が直接、加害者に何かを聞くことは、できない決まりなんだよ」

どうして!?

「加害者には黙秘権があるし、自分の都合の悪いことは言わなくてもいいようになっているからね」

都合の悪いことって何?

勝手に殴ってきたこの人たちに都合もくそもあるの?

若武くんが憤慨した顔で警官に詰め寄る。

「美門と神崎は、なんの落ち度もないのに襲われたんですよ」

うんうん。

「その事情を聞く権利くらい、あるんじゃないですか。いきなり襲われて、ただ謝られただけじゃ納得できませんよ」

第33話『イライラ』→←第31話『交番で』



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(プロフ) - 紗奈#さん» ありがとうございます! (2020年7月26日 16時) (レス) id: 2b665a7700 (このIDを非表示/違反報告)
紗奈#(プロフ) - 続編嬉しいです!頑張ってください!! (2020年7月26日 11時) (レス) id: 6ea719cde4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年7月26日 0時

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