第18話『詐欺師、若武』 ページ1
杏奈side
そう言いながら腰を下ろし、片腕で頬杖をついて上杉くんを見上げる。
「なぁ上杉、男の人生にはロマンってものがなくちゃいけない。それが、男の幅を作るんだからさ」
私は目をまん丸にする。
なんか、急に話が飛んだような・・・。
「今のお前って、数学しかできねーじゃん。特に国語がダメだから、総合じゃ、ずいぶん足を引っ張られてるよな」
上杉くんはムッとした表情になった。
「今のお前に必要なのは、幅の広さだよ。つまりロマンだ。今までと同じことを繰り返してたんじゃ、幅は広がらないぜ。違ったことに手を出してみようって気になってみろよ。そういう精神が、数学以外の教科の点数を上げることに繋がるんだからさ。ロマンって一見、無駄に思えることだよ。でも、とにかくやってみる。それが、お前の未来を広げるんだ」
私はそれで気づいた。
若武くんは上手いこと言って、上杉くんのことを丸め込もうとしているんだって。
なんか、やり口が詐欺師みたい。
「お前の言ってることは、わかったよ」
上杉くんはそう言って、皮肉な笑みを浮かべた。
「ここで犯人を捕まえれば、俺の国語の成績が上がるってことだよな。おまえ、それ、保証すんのか」
刺すような視線で見据えられて、若武くんは苦しげな笑顔になった。
「それは、ものの喩えだろ。とにかくおまえには、ロマンが必要なんだ」
「あほくさ」
上杉くんは、吐き出すように言って横をむく。
「おい若武、お前のテク、錆びかけてるぞ。きちんと磨いとけ」
失敗した。
小塚くんが、ちょっと息をついた。
「上杉も、引っかからなくなってきたよね」
あ、今まで引っかかってたんだ。
上杉くんって、意外と単純なのか。いや、若武くんの詐欺能力が高いのか。
どっちみち、若武くんの技が上杉くんに効かなくなってきたんだ。
「じゃ、改めて多数決を取る」
若武くんは面白くなさそうな顔で言った。
「美門&神崎襲撃リベンジ事件、赤い仮面事件、このふたつは繋がってるから、どっちをメインにするかだけの問題だけど、どうする?」
私個人の意見としては、襲撃事件は私と美門くんの問題だから、議題から外してくれて全然よかった。
そしたら赤い仮面事件にも集中できるし、一件落着じゃない?
そう思って美門くんに目を向けると、美門くんも同じことを考えているみたいで、遠慮がちに手を上げた。
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澪(プロフ) - 紗奈#さん» ありがとうございます! (2020年7月26日 16時) (レス) id: 2b665a7700 (このIDを非表示/違反報告)
紗奈#(プロフ) - 続編嬉しいです!頑張ってください!! (2020年7月26日 11時) (レス) id: 6ea719cde4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2020年7月26日 0時