笑顔の仮面は知っている2【探偵チームKZ事件ノート】 (ページ6)

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第53話『事件』ページ6

杏奈side

みんな点検して、誰も異常はなかった。

「小塚、いる？全員、なんの傷も、噛み跡もないぜ」

若武くんがそう言うと、小塚くんの気の抜けた返事が聞こえた。

「じゃ、出てきていいよ」

瞬間、若武くん達の怒声が上がる。

「裸でかよっ！」

「おまえ、ブースの中で服脱げって言ったじゃん」

「服の上でシャワー浴びたから、びしょびしょだよ」

ほんとに、酷い話だ。

「自分の家に電話して、服持ってきてもらったら？」

彩ちゃんがそう言うと、私たちは話し合って、やがて若武くんの家のお手伝いさんの島崎さんが4人分の服を持ってきてくれた。

つまり、私たちは若武くんの服を着ることになったんだ。

「全部、和臣くんの服なので、他のお子さんに合うかどうか」

島崎さんの心配は大当たりで、シャワーブースから出てきた私たちを見て・・・というか、上杉くんと黒木くんを見て、彩ちゃんは大笑いした。

上杉くんも黒木くんも、袖丈が足らないし、ズボンは長さが足りなくて、脛が出ている。

つまりツンツルテン。

「いやぁ、若武先生」

袖から出た自分の腕をつくづくと眺め回しながら黒木くんが言った。

「お前の腕って、こんななのか」

上杉くんも、体を2つ折りにして、自分の足を見つめる。

「若武の脚、短け」

それで若武くんはカンカンに怒ったのだ。

「2人とも、文句があるなら脱げっ！裸で帰るがいい！！」

私は、若武くんの服はちょうどいいサイズだった。

身長が同じくらいだし、いちおう男物だから少し大きいくらいで問題はなかった。

彩ちゃんと小塚くんが若武くんをなだめると、事情を全て説明してくれた。

フタトゲチマダニのこと、それがパンデミックにつながるかもしれないということ、このお店に忍び込んで、庭で何かをしていた得体の知れない男の人のこと、それから美門くんが感染したに違いないってこと。

若武くんはそれを聞きながら、しだいに真剣な顔になり、強い光を宿しているその目をキラキラと輝かせた。

「無断で他人の店舗に忍び込んだら、これは不法侵入。つまり事件発生ってことになる。俺たちKZの出番だぜ」

事件発生・・・！

「アーヤ、ノート」

彩ちゃんは自分の秀明バッグに飛びつき、そこから事件ノートを取りだした。

もしかして、探偵チームKZ活動開始！？