笑顔の仮面は知っている2【探偵チームKZ事件ノート】 (ページ7)

今日:14 hit、昨日:13 hit、合計:226,553 hit

第54話『イマイチ？』ページ7

杏奈side

「これより、KZの調査会議を始める」

私たちはテーブルの周りに集まった。

でも椅子がなかったので立ったままだった。

それでも誰も文句を言わなかった。

みんな、緊張した表情で若武くんの言葉を聞いていた。

「倒れた美門のためにも、なぜここで感染症が発生したのか、侵入した男は何者で、ここで何をしていたのかをはっきりさせるんだ。そしてパンデミックを未然に防ぐ」

みんなが決意を込めて大きく頷いた。

「今回の事件名は、『殺人ウィルス発生大事件』だ」

彩ちゃんが口を開く。

「今回のは、『若武KZ復帰ダンス大作戦』ってことになってるんだけれど」

彩ちゃんがそう言うと、若武くんはムッとしたように彩ちゃんを睨んだ。

「なんだよ、それ。俺の復帰とダンス大会って、意味わかんねーじゃん」

きっと、図星をつかれて焦ったんだと思う。

みんなは大笑いしてこう言った。

「そっちの方が、おもしれーよ」

「ん、経過がよくわかるし」

「そうだね」

それで、彩ちゃんの意見が採用されたんだ。

「じゃ、事件を見直す」

若武くんは、ブスッとした顔つきだった。

「記録係、読み上げて」

私たちは彩ちゃんに注目する。

「事件の発端は、一週間前。場所はらオープン前のテナントショップＭ＆Ｍの中。どこからか紛れ込んできた猫を、美門調査員が抱き上げた。その一週間後の今日、美門調査員は、原因不明の高熱を出す。過労とストレスによるものと思われたが、小塚調査員によりマダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群らしいと判明。その後、同じ猫がテナントショップの前を通りかかるのを発見、確保した。同時に東西関東建設の作業服を着た男が、大きなバッグを持ってＭ＆Ｍから出てくるのを目撃。店内から盗まれたものはなく、床に残された足跡から、男は庭を歩き回っていたものと思われる。以上がこの事件の経過」

彩ちゃん、まだ完全に書けてなかったのに、瞬時に頭の中で状況を整理して発表してる。すごい。

「今回の事件の謎となっているのは、①一週間前に庭にいた猫はどこから来たのか、②東西関東建設の男はＭ＆Ｍの庭で何をしていたのか。以上」

なんだか改めて聞いてみると、これってあまりちゃんとした事件のように思えなかった。

「あのさぁ」

上杉くんが言った。

「これ、もしかして事件じゃなくね？」

そうかも。

ちょっとイマイチかな。