笑顔の仮面は知っている2【探偵チームKZ事件ノート】 (ページ44)

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第11話『赤い仮面』ページ44

杏奈side

それぞれが自分の秀明バッグを持って、玄関まで行くと、そこはもうシャッターが下りていた。

「裏口にまわろう」

それでみんなで、裏口から通りに出た。

薄暗く、道端も狭かったから、2人ずつ横に並んで、列を作った。

先頭が若武くんと彩ちゃん、その後ろに上杉くんと小塚くん、その後ろに私と美門くん、そして最後に黒木くんという順番。

「しっかし、」

若武くんが片手に持った秀明バッグを肩に担ぎながらボヤく。

「砂原の奴、うらまやしいな」

たしかに、大会社の社長になるなんて憧れるよね。

「俺なんて、まだ1度も新聞に載ったことないんだぜ。あんなに大きな写真入りで載れてさ」

あ、そっちですか。

「だからさあ、」

上杉くんがからかう。

「犯罪者になれば、すぐ載れるって言ってっだろ。俺が新聞社に、お前の写真を提供してやるよ。すげぇ悪人面に写ってるのを選んでさ」

若武君はムクれ、私たちはクスクスと笑った。

その時、私たちの歩いている道の脇から、ものすごい勢いで誰かが飛び出してきた。

ちょうどそこを通り掛かっていたのは、彩ちゃんだった。

横からぶつかられ、彩ちゃんは吹っ飛び、隣にいた若武くんに激突。

咄嗟に若武くんは向き直って腕を広げ、彩ちゃんを胸の中に受止めたけど、踏みとどまれなかった。

彩ちゃんを抱いたまま肩から地面に突っ込み、うめき声をあげる。

「痛っ！」

痛そう・・・。

「おいっ！」

その人の後ろにいた別の男の人達がせっつき、3人で駅の方に駆け出していく。

私はその音でハッとした。

この足音と声は、朝駅で私たちを襲った人達のものだったから。

直後、美門くんの怒声が響く。

「きっさまっ！」

血相を変えて、美門くんは秀明バッグを放り出し、後を追いかけていく。

私は慌ててその後に続く。

みんな速かったけど、何とか見失わないように追いかける。

美門くんがまた危ない目に遭わないための見張りのために、ね。

でも、男の人たちは待たせてあった車に乗り込み、逃走してしまった。

私と美門くんは足を止めて車の背中を見つめる。

「逃げられちゃったね」

「くそっ！」

私と美門くんはみんなのところに戻る。

みんなはなにやら話をしていた。

小塚くんの手には、赤い仮面があった。

多分、あの男の人たちが落として行ったんだろう。

「逃がした・・・」

美門くんは力なく呟きながら立ち止まり、両手で膝を押さえて前かがみになる。