笑顔の仮面は知っている2【探偵チームKZ事件ノート】 (ページ21)

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第68話『頑張る』ページ21

杏奈side

「おもしれーじゃん」

若武くんが、ふたつの目に挑みかかるような光を浮かべる。

「はっきりさせてやるよ。この庭で何が行われていたのかを、な」

おお！かっこいい！

「黒木、防護服って、あれ？」

黒木くんはうなずき、さっき置いた大きな荷物のそばまで歩いていって、その中から白い服を取り出した。

宇宙服みたい。

「では諸君」

若武君は、悲壮な感じのする、でもかなり芝居がかった表情で私たちを見回した。

「俺は、これからたった1人で庭の調査を始める。もし不幸にして美門の後を追うようなことになったら、せめて諸君、俺のことを素晴らしいリーダーとしていつまでもを記憶にとどめてほしい。それだけが望みだ」

上杉くんがフンといわんばかりの表情で横を向き、黒木くんがクスッと笑った。

「せっかくのヒロイックムードを削ぐようで悪いけど、実は、俺の分も用意したんだ。一緒に行こう」

若武くんは、ゲンナリした顔になった。

「シャベルも用意したから。さぁ着替えて出陣だ」

黒木君に先導される形で、若武くんは防護服に着替え、庭に通じる窓を開けて、2人で出て行った。

私たちは窓に張り付くようにして様子を見守った。

2人はシャベルで庭の土を掘り起こし始め、それが延々と続いた。

ついには上杉くんが飽きてしまって、

「なにか分かったら、教えてよ」

そう言って窓辺からリタイアし、テーブルに上って横になってしまった。

彩ちゃんが、上杉くんのそばに行って非難する。

私は彩ちゃんの後ろから、上杉くんの顔を覗き込む。

「若武たちが一生懸命やってるのに、寝てていいの」

上杉君はどうってことないと言ったように眉を上げたけれど、そのまぶたはもう半ばまで閉じられていて、まつ毛の下からわずかに見える目はとろんとしていた。

「あいつら2人とも、今日の試合出てないんだ。若武は除名だし、黒木はこの調査でフケてたからな。体力、余ってんだよ。俺なんて、若武も美門も黒木もいなくて、思いっきり使い回されてさ、挙句に長い説教を食らってもう限界だって・・・」

そう言いながら、すうっと表情を失って、眠っていく。

すっかり目をつぶってしまったその顔は、すごくあどけなかった。

・・・こんな無防備な顔するんだ。

「お、黒木」

庭で若武くんの叫び声があがる。

「これ、何だ」

彩ちゃんは気になったのか、再び窓際に戻る。

私は戻らずに、眠っている上杉くんに少し近づいた。