警察庁の降谷さんは今日も当たりが強い！【降谷零】 (ページ35)

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二十九話ページ35

「お待たせしました！」

急いで店の外に出ると、降谷零が壁に寄りかかる形で立っていた。

「来たか」

どこかぶっきらぼうに言う声に自分がやらかしたことを確信する。

すみませんと言おうとすると、「行くぞ」と言ってスタスタと先に歩いて行ってしまう。

「ちょ、待ってくださいよ！」

やらかしたことは認めるけど、置いて行かないでよ！

てかどこに行くの！？

慌てて降谷零の後を追いかけて路肩にとめた車に乗り込むと、降谷零が車を発進させる。

「あの～、どこに行くんですかー？」

声を掛けるも反応がない。

降谷零の方を見ると、何やら独り言を呟いている。

「ここから廃墟エリアまでは……だとすると地形的に……」

おーい、私の話聞いてるー？

……聞いてないな、これは。

自分の世界にすっかり入ってしまった降谷零は放っておいて、さっきの出来事を思い出して勝手に気まずくなる。

でもそれにしては降谷零の切り替え早すぎない？

それとも何ですか、モテるからそういうことは慣れてるとか？

あーそういうことね……ってあれ、勝手に悶々と考えてるのって私だけ！？

少しくらいは気にしてくれてもいいのに。

ムスッと不機嫌になって外を見ると、人気のない海沿いの道に出ていた。

丁度ここは表の道から生い茂った林で分断されていて人目に付きにくい場所。

一軒家がまばらにあるものの、窓ガラスは割れていて廃墟と化している。

もしかして、と思うと同時に300ｍ先に薄汚いグレーの建物が見えた。

一見すると汚れで廃墟に思えるけど、廃墟にしては綺麗な窓ガラスがきちんとはまっていて明らかに異質。

「降谷さん」

「ああ、明らかに怪しいな。恐らくあれが奴らの拠点だったんだろうな。この辺は廃墟だけだとさっきの亭主も言ってたし」

すると降谷零が後部座席から帽子と手袋、それから……

「盗聴器探知機？」

「ああ、こちらの情報を知られるわけにはいかないからな」

うわー、この車何でも出てくるなー……って、

「まさかこれから突入するんですか！？」

「そうだ、ここまで来たのなら引き返せないだろ？気配はないが、監視カメラとかでこの辺一帯が既に監視されている可能性もあるし」

ほら、と言って帽子と手袋を渡してくる。

全く、こういう所で無茶振りが出るんだから。

帽子と手袋を受け取り、それらを身に着けた。