警察庁の降谷さんは今日も当たりが強い！【降谷零】 (ページ11)

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十話-1 ページ11

「さてと、アレの調子はどうかな～？」

ポケットからワイヤレスイヤホンを取り出し、耳に着ける。

男の元から去った足で、私は今お手洗いの個室にいる。

何かかっこよく締まらないけど許して私。

イヤホンからはバーの喧騒しか聞こえなかったが、暫くすると……。

『……おお来たか！』

『わりい。道が混んでて遅れたわ』

さっきの男の声と別の男の声が聞こえた。

「うん！上手くいってるわね」

小さくガッツポーズをする。

さっき男につけた盗聴器は機能してるみたいだし、丁度男の相手も来たようだ。

アイツも今頃聞いてるだろうし、ここら辺で戻るのがベストかな。

お手洗いを出て男たちの方を見ると、酒の注文をもう済ませたのか既にグラスを片手に飲み始めていた。

よし。あとは風見さんを連れて店を出るだけ…と思ったのだが。

「あっ、さっきの姉ちゃ～ん！こっちにおいで一緒に飲もうよぉ～」

げ。

こちらの視線に気付いたのか、男がこちらに向かって手を振っている。

男の身振り手振りに店中が私に注目する。

うわ～、そう来ちゃったか～。

遠くの席で寝てしまっている風見さんと共に店を出て男達の印象に残らないようにしないといけないんだけどな。

ここで無視するとさらに目立って逆に怪しまれるかも。

仕方ない。構ってあげよう。

「いいですよ～、そっち行きますね～」

と男に近づくと。

「へへッ、こっち来いよ～」

「うわっ！」

急に腕を掴まれて無理やり隣に座らされる。

あまつさえ。

「おっ、いい体してるな～」

肩に手を置かれて絡まれる始末。

その瞬間にカッと怒りが沸く。

急に何するんだゴラア！

……と言うのを我慢し。

「もう～急に何するんですか～」

肩に置かれた手を掴んで放す。

ついでに指の骨を折ってやりたいけど我慢我慢……。

すると向かい側に座る男までも便乗し。

「ね～ちゃん可愛いねぇ～。この後俺たちとどこか行かな～い？」

「どこかってどこですか～」

「イ・イ・ト・コ・ロ♡」

うわぁ……相手するのめんどくさ。

このまま一緒にいると更に疲れそうだし、早めに風見さんと立ち去ることにしよう。

「すみませ～ん、今日は連れがいるので……」

「えぇ～、連れ？どこどこ～？」

「あそこで寝ちゃってると思うんですけど……あれっ？」

風見さんがいるはずの席を見ると、当の本人の姿がなかった。